LF対談
オートファジーの研究をサイエンスの土俵に乗せる No.58(2009.11)
東京工業大学統合研究院先進研究機構特任教授
大隅良典 氏
財団法人 千里ライフサイエンス振興財団
岸本忠三 理事長
自分で自分を食べる機構:オートファジー
岸本 僕は専門ではないからあまり知らないんですけど、これまではタンパク質というと、作る方向、DNAからRNAへとか、そういうことがものすごく進んできたし、みんな興味を持ちましたよね。タンパク質を壊すというのはあまり興味を持たなかった。その中で2つ、ユビキチン・プロテアソーム系とオートファジーというのが非常に重要な壊すプロセスやと、それがなかったら生命は維持できないと言われだしてきたんですけど、自分で自分を食べるオートファジーのほう、そういう概念の発見というのは大隅先生と言っていいわけですね。
大隅 いや、どうでしょう。タンパク質の分解ってある程度はみなさん興味を持っていたんですけど、分解って難しいんですね、解析が。細胞質内でタンパク質の合成と分解という反応が同時に起こっていたら元も子もないので別のコンパートメント、ノーベル賞をもらったデ・ヂューブが発見したライソソーム(リソソーム)で分解はやっているんだろうとは言われていました。これは完全に死語になりましたけど外のヘテロなもの、自分でないものを壊すヘテロファジー、それと自分自身の中のものを壊すオートファジーという概念は、1960年代に概念としては成立していたんです。だけど、なにせ当時は電子顕微鏡での解析だけでしたので一向に話が進まなくて、ライソソームにタンパク質がどう入っていくかということに関しては皆目わからない。
岸本 それが生命にとって非常に大事なものとは言われていたんですかね。たとえば栄養源がなくなってきたら、自分の中のものを壊してとか。
大隅 タンパク質がリサイクルされているという研究はあったんですけど、ほとんど注目されなかったというのが事実で、80年代にユビキチン・プロテアソーム系というシステムが見つかってやっぱり分解って大事なんじゃないかと言われはじめても、ライソソームでの分解はいよいよ忘れ去られる時代が続いていたと思うんですよ。それの1つの理由に、ライソソームでの分解に関わる遺伝子もタンパク質もわからなかったことがあったと思います。ライソソームってそれこそいろんなものを取り込んでいるので、これがライソソームだよって分画がなかなか取れない。バイオケミストリー(生化学)が一向に進まない。一方では電子顕微鏡なしには話が進まなくて、分子生物学者には遠い存在だったんです。
岸本 日本人が得意なのは、遺伝子を片っ端からクローニングするとか、ノックアウトするとか、そういう研究は多いんですけど、概念の発見というのはなかなかない。オートファジーは、それに関わる遺伝子を見つけられてと、みんな大隅先生から一連の研究は始まっている。オートファジーの発見はやっぱり大隅先生やろうという話になるんですけど、どう思われますかね。
大隅 発見したというのは当たっていないだろうと私自身は思っています。ただ、ずっと進まなかったのが我々の仕事で一気にサイエンスの土俵に乗っかってきたというのは間違いない。酵母で遺伝子が見つかって、それが動物細胞にまである普遍的な装置だってことになったら、それを1つ1つつぶしたら何が起こるかということは…。
岸本 遺伝子を壊してということになってくると誰でもやるわけやけど、最初にそういうことを土俵に乗せてきたという点において高く評価されるわけで。
大隅 そう言っていただけるとうれしいんですが。
岸本 だから、大隅先生に対談をお願いしようと言うたんですけどね(笑)。
自分のものをリサイクルするシステム
岸本 だけど、ユビキチン・プロテアソーム系とオートファジー、なんで2つなければいかんのですかね。
大隅 ぶんある種の使い分けをしていて、実をいうと分解って生化学の教科書的にいうと合成はエネルギーを要求する反応だけど、分解はいらないと思われていたんですね。ユビキチンのシステムで壊すと、合成よりは少ないですけど、結構ATPを使っているんですよ。壊すって作業はある意味で非常に危険な作業なので、対価を払いながらものすごく特異的に1つ1つのタンパク質を壊していく。一方、オートファジーは、エイヤッと一度にたくさんのタンパク質を分解する。実は私たち1日食事しないと肝臓が70%ぐらいになるんだそうです。オートファジーは非選択的でバルクな分解を担っています。飢餓になるとほとんどありとあらゆる組織でオートファジーを起こすんですが、唯一起こっていないのが脳です。
岸本 脳は飢餓にはならない。
大隅 ならないんですね。脳は大事なのでありとあらゆるサポートがあって、他の器官で分解してアミノ酸とか糖を供給している。ですから、ユビキチン・プロテアソーム系と違って一義的にはあんまり選択的ではなくて、栄養源の枯渇みたいな非常時に対応する機構だと思うんです。
岸本 だけど、それも危険なことでもありますよね。ちょっと食事をとらんかったら区別なしに壊されていったら(笑)。
大隅 オートファジーでタンパク全部が壊されることは間違いなくないですね。最大限で1時間に2、3%ですけど、あるところでちゃんとセーブするようなレギュレーションがあるんだろうと思いますけど、それはまだわかっていません。
岸本 栄養が不足してきたら自分のものを壊してリサイクルする。それは先生が酵母を研究しておられたからやりやすかったということですか。
大隅 そうですね。私は最初から栄養飢餓で誘導される現象としてオートファジーをやってきたんですけど、それは1つには私ども酵母を培養するときには、なぜかやたらとリッチな培地で培養するのが当り前になってるんですよ。どんどん分裂して増える状態が研究されてきたわけですが、自然界で考えるとむしろ栄養が足りない状態のほうが普通で、生物にとって飢餓に耐えられるシステムを持っていることはものすごく大事ですよね。
岸本 それは人間でもそうで、栄養が過剰になるっていう状態はほんとここ数十年ですよね。
大隅 飢餓に対応してどうやって生きるか、酵母は窒素源が枯渇すると胞子を作ります。そのためには自分の中のものをリサイクルして胞子を作るのに必要なタンパク質を作ることが必須です。つまり生命ってそうした合成と分解の平衡状態としてしか存在できないんだと思います。なのでオートファジーは進化の初期に出現して、そのままずっときているという理解でいいんじゃないでしょうか。実をいうと今はみな、飢餓じゃないシグナルによっていろんなところでオートファジーが働いている、たとえば免疫応答に使われているとか、そちらのほうに興味が移ってきてはいるんですけど、基本はやっぱり自分のものをうまくリサイクルするシステムがオートファジーの本質ではないかと私は思っています。
大隅良典 氏
東京工業大学統合研究院先進研究機構特任教授
1945年、福岡市生まれ。67年東京大学教養学部基礎科学科卒業。72年同大学院理学系研究科修了後、同大学農学部研究生。74年米国ロックフェラー大学に留学。77年東京大学理学部助手、86年講師、88年同大学教養学部助教授。96年岡崎国立共同研究機構(2004年自然科学研究機構に改組)基礎生物学研究所教授。08年東京工業大学統合研究院教授を併任、09年より同研究院先進研究機構特任教授。専門分野は分子細胞生物学。酵母の研究から、細胞内のタンパク質分解を担うオートファジーの重要な過程であるオートファゴソーム形成に関わる遺伝子群を同定。オートファジーの分子機構、生理的意義の解明の端緒を開く。受賞は藤原賞、日本学士院賞、日本植物学会学術賞、朝日賞。
液胞の中に構造体が貯まるのが見えた
岸本 酵母というのは真核単細胞で細胞周期の研究でも重要でしたよね。そういうことから先生も酵母の研究に入られたんですか。
大隅 私が酵母をやりだしたのは1974年にロックフェラー大学のエーデルマンのところに留学したときからで、彼が細胞周期にちょっと興味があったことからたまたま始めることになりました。日本に帰ってからも酵母をやっていいよと言われたので、酵母の仕事を本格的に始めたんです。東大理学部の植物学教室でした。
岸本 その頃からオートファジーの研究を?
大隅 当時その教室は細菌の膜輸送をやっていたんですけど、私はちょっと人がやらないことをやりたいという思いがあるので、細胞膜じゃなくて細胞の中の膜、植物では90%くらいを占めるコンパートメントで、酵母は20、30%くらいですけど、液胞の膜がどんな機能を持っているかというのを始めました。液胞にはいろんなものを運んで貯める性質があって、それのメカニズムみたいなものを10年くらいやったんです。88年に独立したときにそういう仕事はみなその教室に置いていって、別のこと、液胞の中に分解酵素があるので液胞の分解機能を調べようと考えました。酵母は昔から分解酵素の活性が強いので生化学には向かないと言われてきました。
岸本 精製しようとすると酵素で壊されるということですか。
大隅 そうなんです。それはみな液胞の酵素なんです。ですから、液胞でいろんなものが分解されるのだろうと漠然と多くの人が思っていたんですけど、液胞の中に何がどのような機構で入っていくかはまったくわかっていなかったので、それをやろうと。はて問題は何から始めるか、私は顕微鏡で眺めるのが好きなので、液胞に入ったものが壊されなかったら見えるんじゃないかとふと思ったんですね。液胞の中の分解酵素がない変異株というのがあったので、それを取り寄せて飢餓状態にしました。というのは、酵母の生活史の中で胞子形成時に最も分解が起こるに違いないと思ったからです。酵母は窒素源がなくなると減数分裂を始めて4つの胞子になる。それが遺伝学の基礎なんです。他に何も栄養源がないときに自分を作り変えるためには自分の中のタンパク質をたくさん分解しないといけないだろうと。そんなわけで、独立して2カ月も経たないうちに、飢餓に晒された細胞の液胞の中に大きな構造体がどんどん貯まっていくのが見えたんです。
岸本 飢餓にしたら液胞の中にタンパク質が入っていくと。
大隅 ええ。もちろんタンパク質が見えるはずはないので、細胞質のタンパク質を取り込んだ構造だというのは、あとから電子顕微鏡でわかったことですけど、とっても面白い現象に違いないと思いました。
岸本 普通の株では見えないものが見えたということですね。
大隅 野生株ではそういう構造も液胞の中に入っていっては壊れていくので誰も見つけられなかった。顕微鏡で見えるのならば、それが作れなくて貯まらない変異株をとれば、その構造の形成過程に関わる遺伝子がわかるだろうというのが次のステップでした。それで幸いなことに、そのオートファゴソームと呼ばれる構造を作るのに18個ぐらいの遺伝子が必要なことが酵母でわかりました。
岸本 オートファゴソームを作るのにそんなに遺伝子がいるんですか。
大隅 いるんですね。私も膜屋ですけど、実は膜屋は膜は膜からしかできてこないと信じているんですね。だけど、オートファジーを見ていると、細胞を飢餓状態にすると、突如として小さな膜構造ができてそれが伸び出して細胞の中に閉じた空間を作る。それはほとんど知られていなかった膜現象で、膜を伸ばして細胞質の一部を取り囲む、液胞なりライソソームと融合する。相当に複雑な過程ですからそのくらいの数の遺伝子は必要だと思います。
岸本 人でも同じようにそんなにあるんですか。
大隅 96年に岡崎の基礎研に呼んでもらってから、私のところにオートファジーをやりたいと言って来た水島昇君が酵母の遺伝子の哺乳類バージョンを取りはじめてくれて、動物細胞にも大事な遺伝子群がそっくりそのままあるとわかりました。
岸本 そうすると、どれかが変異して病気になるとかが起こっても…。
大隅 ところが今のところ、これこそオートファジー病だよというのはないんですね。
岸本 生命に必要やからみんな生まれてこないということなんですか。
大隅 なのかなとも思うし、もう少し進んでくると実はオートファジーが関わっていたということがわかる病気が次々と出てくるのではと。たとえば、先ほど脳では栄養飢餓でオートファジーは起きないと申しましたけど、オートファジーに必須な遺伝子をノックアウトすると脳でユビキチン化したタンパク質が溜まって疾患が起こることがわかっています。だから、細胞の中のクオリティコントロールにオートファジーもユビキチン・プロテアソーム系と同じくらい関わっていると考えられています。
岸本 オートファジーの遺伝子の発現は脳の細胞でも起きているわけですか。
大隅 はい。分裂しない神経細胞ではある Atgタンパク質はむしろ多かったりするので、飢餓誘導ではないオートファジーが重要だと思われます。このへんはまだ全然解けていないんですけど、機能しなくなったタンパク質だとか、おかしな小器官を分解するのに関わっていると思われます。ユビキチンのシステムとどこかでクロストークしているんじゃないかというのもおぼろげながら見えてきているところです。
若い人はサイエンスを楽しんでいるか
岸本 最近の国の研究費配分は「何の役に立ちますか」(笑)が主流ですけど、オートファジーも最初は顕微鏡で酵母を見ていて何をしているのやろうと、そういう基本的なことの積み重ねが病気とかにもつながっていくわけですよね。2700億円を何十億円ずつ分けるとかとも言って、僕は反対していますけど、どう思われますか。
大隅 自分自身の経験から言っても、研究のきっかけはお金があったからできたわけではないんですよ。そういう点で研究費はある程度はやっぱり浅く広く配分してくれればと。私は曲がりなりにも少しずつでもサポートしてもらっていたので、恵まれていたとは思います。
岸本 お金をたくさんもらうと、あれもできる、これもできると、だんだん薄くなっていくんですよ。何をするか、何をしないでおくか、僕は大事なことは、何をしないでおくかだと思うんですけどね。
大隅 私もそう思います。やっぱり工夫してみようというのが大事で。お金があることは強力なんですけど、お金があると若い人もギョッとするようなことを始めてくれないなと思っています。
岸本 ある程度、飢餓状態にしないといかんわけですね、研究費も(笑)。
大隅 たとえば、今は動物細胞でオートファジーをやろうと思ってもそんなにやさしくないんですね。ありとあらゆる手段を使わないとなかなか本質に迫れない。それなら酵母だとお金もかからないしやってみようかという人がもう少し出てきてほしいなと思います。そこから面白い仕事が出てきたら誰かがサポートする。そういう仕組みがあると、もう少しサイエンスが楽しくなるんじゃないかと思います。今、若い人がサイエンスを楽しんでいるかというと、そうでもないんじゃないかと思うんですね。1つには成果を早くあげないと生き残れないという強迫観念があって、大学院時代に『Cell』や『Nature』『Science』に載ったらポンポンといくと思ってしまいがちです。
岸本 載らないかんのやというのがね。1本載らんかったらいかんのですわ。
大隅 そういうのが毒していて、載る可能性の見える領域しかなかなかやれない。海のものとも山のものともわからないものをやらしてあげようという雰囲気がないのはさびしいなと思ってしまいます。
岸本 地道に科学研究費を増やしていくとかいうのもないですからね。
大隅 今は若いときにそういうふうになっていないと抜け出すのは難しいとみんな思うんですよ。私なんかはそういう意味では特異的だと思っていて、なんとかサポートしてくれる人がいたから生き残れたのかなといつも思っています。
岸本 ちゃんと見てくれている人がいたわけですね。
大隅 私が最初に論文で書いたことを海外で面白いと言ってくれた人がいたことも励みになりました。誰かが面白いねと言ってくれることは、若い人がサイエンスを続けるのにものすごく大事な点だと思いますね。
岸本 オートファジーが広く注目されはじめたのはここ5年くらいですかね。
大隅 少しはしゃぎすぎなんじゃないかとも思っています。
岸本 10年前にはアポトーシス、アポトーシスと言っていましたよね。
大隅 そういう感じですね。
岸本 我々の分野で言ったら自然免疫で、審良(静男)君に言うとるんですよ。旬があるでと、旬のうちにえろうなっとけよと(笑)。だけど、先生がそういう流行りを作ってきたということですよね。僕は言うんですよ。流行を作れと。流行を追っていたら、最初に作った人をけっして抜けないと。
大隅 私としては若い人に流行りのことはやるなとずっと言ってきたのに、オートファジーが流行りになってしまってちょっと困っているんですけどね(笑)。
岸本 今日はお忙しいところ、どうもありがとうございました。
EYES
細胞内のタンパク質を分解して再利用するオートファジー
酵母の研究からオートファジーに
特異的な遺伝子群を発見する
細胞内では常時、酵素など生命活動に必要なタンパク質が合成されるとともに分解されています。タンパク質にはそれぞれ固有の寿命があることも知られています。その際、タンパク質はどのように分解されるのでしょうか。たとえば2004年のノーベル化学賞の対象となったユビキチン・プロテアソーム系と呼ばれる分解システムでは、ユビキチンという小さなタンパク質が標的のタンパク質に何個も結合し、それを指標としてプロテアソームという酵素複合体で分解されます。
このように1つ1つのタンパク質を選択的に分解するのではなく、非選択的に一度にたくさんのタンパク質を分解する、オートファジーと呼ばれるシステムも備わっています。オートファジーとはギリシャ語で「自分を食べる」を意味します。ユビキチン・プロテアソーム系と同様、ヒトの細胞をはじめほとんどすべての真核細胞に備わっており、タンパク質などを分解してその成分を再利用できるようにしています。オートファジーでは、細胞質にオートファゴソームという一過性の膜構造が現れ、細胞質の成分を取り込みます。そして、分解酵素を蓄えたリソソームという小胞と融合して(酵母や植物では液胞)、取り込んだ成分を分解します。その際は、タンパク質ばかりでなくミトコンドリアなどの小器官も対象となります。
そのオートファジーの分子機構の解明に先駆的な役割を果たされたのが、今回、LF対談にご登場いただいた大隅良典氏(東京工業大学統合研究院先進研究機構特任教授)です。大隅氏は、東京大学教養学部に研究室を持たれた1988年、酵母において栄養飢餓時にオートファジーが誘導されることを発見されました。液胞内の分解酵素を欠いた酵母の変異株を窒素源の飢餓条件下に置くと、液胞内に球形の構造体が貯まっていくのが光学顕微鏡で観察されたのです。電子顕微鏡で解析すると、構造体には細胞質の成分が取り込まれていることがわかりました。動物細胞でオートファジーと名づけられながら、その解析が進んでいなかったリソソームに細胞質の成分を送り込む現象に相当するものでした。
この構造体は、細胞質の成分を取り込んだ二重膜のオートファゴソームがその外膜で液胞と融合し、内部に送り込んだものでした(内膜だけになった構造体はオートファジックボディと呼ばれる)。液胞内に分解酵素があると内膜も瞬時に分解され、光学顕微鏡での観察は難しかったのです。ちなみに動物細胞のオートファジーでは、液胞に比べてリソソームが格段に小さいため、オートファゴソームとリソソームが融合すると逆にオートファゴソームに分解酵素が送り込まれます。大隅氏はさらにこの構造体が作られない変異株の探索に取り組まれ、オートファジーに特異的な遺伝子群を突き止めることになります。それらはオートファゴソームの形成に必須な遺伝子群で大隅氏はAPG遺伝子と名づけられましたが、その後、別のグループにより同定されたオートファジー関連遺伝子群と統一して現在はATG遺伝子と呼ばれています。
続いてこれらの遺伝子のクローニングが進み、1996年に ATG5、ATG13、ATG1が報告されました。それらの新規の遺伝子群の機能解析が本格的に進んだのは、同年に岡崎国立共同研究機構・基礎生物学研究所に移られてからで、短期間に一気にその機能単位が明らかにされました。ユビキチン様結合反応系Atg12、脂質化反応を担うAtg8系が相次いで発見されました。21世紀に入ると動物細胞でも、酵母と同様の遺伝子群が認められ、オートファジーの研究は飛躍的な発展を遂げることになります。
当初、大隅氏にとっては栄養飢餓時におけるタンパク質などのリサイクルシステムとして研究を始められたオートファジーでしたが、現在は細胞内の品質管理などにも利用されているといわれています。たとえば、ユビキチン・プロテアソーム系では異常なタンパク質の凝集体などは処理できませんが、オートファジーでは可能です。そのため、アルツハイマー病など神経変性疾患などとの関連も指摘されています。今後のオートファジーの研究の一層の進展が期待されます。