LF対談

今後も未知のペプチドホルモンを
探していきたいという思いはあります No.85(2018.10)

国立循環器病研究センター 名誉研究所長・理事長特命補佐
寒川賢治 氏

公益財団法人 千里ライフサイエンス振興財団
岸本忠三 理事長

「煮沸」する方法の開発で
少量の組織からのペプチド精製が可能に

岸本 寒川先生は徳島県のご出身で、大学院修士課程までは愛媛大学で過ごされましたね。そしてその後は、松尾壽之先生(現・国立循環器病研究センター名誉研究所長)とともに研究をされました。松尾先生とは、どう出会われたのですか。

寒川 学生時代、私は中学校から大学までサッカーをやっていました。それで「高校のサッカー部の監督になって全国大会へ行く」という夢を抱き、高校教師になろうと大学で理学部に進んだのです。けれども、理学部で有機合成の研究をしていると、やはり研究がおもしろくなって大学院へ進みました。
当時、愛媛大学には博士課程がありませんでした。そこで修士課程でご指導いただいていた山崎信行先生から「博士課程では、大阪大学蛋白質研究所の化学構造部門(成田耕造教授)に行ったらどうか」と言われ、行くことになったのです。すると、そこに米国のチューレン大学から帰国して1年ほどの松尾先生がいらっしゃいました。米国で、LH-RH(黄体形成ホルモン放出因子)の構造決定の研究を行ない、蛋白質研究所ではともに研究できる若手を探していました。私が自動的にそのポジションに就いたような感じです。

岸本 その後、寒川先生も松尾先生も宮崎医科大学へ行きましたね。

寒川 はい。大学院修了後の1976年から宮崎医科大学に第2生化学講座ができるまでの2年間ほどは、大阪大学の薬理学教室の和田博先生の研究室に松尾先生も私もいました。そこで過ごしたことが、その後の私のペプチド探索の研究のきっかけになりました。実習の手伝いに駆り出されて、摘出平滑筋を用いたバイオアッセイのようなことをこなしていったんです。

岸本 それで、寒川先生が最初に精製したペプチドホルモンは、どんなものでしたか。

寒川 α-ネオエンドルフィンというオピオイドペプチドの一種でした。当時、群馬大学の産婦人科の五十嵐正雄先生が、卵胞刺激ホルモンを特異的に分泌させるホルモンがあるのではないかということで、ブタの脳の視床下部を10万頭分以上も集めておられました。私はその手伝いをしていましたが、ほかのペプチドも精製できないかと3万頭分を用いて取り組んだのです。それがα-ネオエンドルフィンでした。たかだか10個のアミノ酸からなるペプチドでしたが、1978年に発見して1981年に構造決定するまで3年ぐらいかかりました。

岸本 そうしたご苦労が、寒川先生の「ペプチドを精製するときは熱する」という方法に結びついたのですか。

寒川 ええ。もっと少量の組織でもペプチドホルモンを精製できるような方法を求めて行き着いたのが、「組織がフレッシュなうちに煮沸する」という方法でした。
それまでは、組織をたくさん集めて凍らせていたんです。ところが実際に使うときは解凍しますから、そのとき細胞のタンパク質が分解酵素によって壊れてしまいます。それで精製がむずかしかったんですね。
組織を煮沸すると、分解酵素はすぐに失活するのでタンパク質は分解されずにそのままで変性して、簡単に沈殿してしまうので取り除けますし、活性があるペプチドはそのまま残ります。煮沸精製法は、いろいろなペプチドを精製する技術の原点になりました。

心臓から
ペプチドホルモンを発見

岸本 寒川先生は、これまで何種類のペプチドホルモンを同定されたのですか。

寒川 だいたい30種類ぐらいですね。

岸本 発見された数々のペプチドホルモンのなかでも、もっとも有名なものがANP(心房性ナトリウム利尿ペプチド)だと思います。また先生は、BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)や、CNP(C型ナトリウム利尿ペプチド)も発見されました。
まず、ANPについては、おもに心臓から分泌されるペプチドホルモンと聞きます。対象をそれまでの脳から心臓に移されたのはどうして……。

寒川 当初、宮崎医科大学で研究をするにあたり、新たな対象を研究しようとして脳に着目し、先ほどのα-ネオエンドルフィンを苦労して同定したのですが、脳内のペプチドの機能解析まではできなかったんですね。苦労して発見したのに周囲の反応が薄いとも感じました。
そうしたなか「心臓には未知の物質があり、抽出してラットに投与すると尿が増える」といった報告がされていたのです。そして1983年、米国のフィリップ・ニードルマンらのグループが『サイエンス』誌に、ラットの心房由来の抽出物を分析してみたところ、摘出したヒヨコの直腸やラットの血管を弛緩させたりする活性があったと報告しました。
この報告を受けて、私たちは、亡くなった患者さんの病理解剖の際に心房組織を提供していただけたので調べてみました。するとヒヨコの直腸を弛緩させる活性が強く現れたんです。
私たちにとっては幸運だったことに、提供を受けた心臓はたいてい心不全の状態になっています。正常なラットの心房とはちがって、ANPの前駆体が少なくてマチュアなフォーム(活性型)が多かったんです。

岸本 心房細動のような病気でも、何回もトイレに行くようになりますものね。

寒川 ええ。海外の研究者たちはラットの心房を使う一方、私たちは心不全状態のヒトの心房を使うことができたため、ANPのマチュアなフォームが多い状態であったという有利さがありました。

岸本 やはり煮沸法によって、抽出していったのですか。

寒川 はい。とりかかったのが1983年の7月始めでしたが、8月には精製できて、8月の終わりごろには一次構造まで決めることができました。1984年1月には論文を出せました。

岸本 どんな反響でしたか。

寒川 当時、私たちは循環器については素人でしたから、成果がインパクトのあるものとはあまり思っていなかったんです。ところが、循環器の分野では「第三因子」とよばれる因子が存在すると言われていて、それがまさに、私たちの発見したANPだったんです。循環器の分野では急速に研究が広まっていきました。

岸本 ANPは医薬品にも応用されているのですよね。

寒川 はい。1995年から、急性心不全治療薬として日本で発売されました。

岸本 では、BNPはどう発見したのですか。

寒川 ええ。心臓を対象に研究してANPの構造が決まったところで、もう一度、脳に立ち戻ろうと考えたんです。それで、ブタの脳の活性を探っていくと、ANPとよく似たBNPが見つかりました。

岸本 BNPは、脳(Brain)で見つけたから、Bがついている……。

寒川 そうです。ところが、その後いろいろ調べていくとBNPは心臓で多く発現しているということがわかってきました。ヒトでも心不全により心肥大が起きると、心室でBNPが多くつくられます。正常のときはあまり分泌されず、心不全になるとBNPの遺伝子発現が増えるため、BNPは心不全のマーカーとなります。

岸本 さらに、CNPのCは、ANP、BNPに次ぐ「C型」ということだそうですが、これは体のどこで見つけたものですか。

寒川 脳です。産生量が非常に少なくて難儀しましたけれども。

岸本 CNPにはどんな働きがあるのですか。

寒川 脳で発見されましたが、血管の内皮など体のいろいろなところでもつくられ、局所因子としてさまざまな調整をします。もう一つ、興味深いのは、軟骨形成に必須だという点です。低身長をもたらす軟骨低形成症という病気の治療薬になるとして、米国で研究が進められています。

「心臓にがんができない」にANPの血管保護作用あり

岸本 心臓からもホルモンが出るという発見は画期的なことだったでしょう。

寒川 ええ。じつは、心臓にグラニュール(分泌顆粒)があるということは1950年代には解剖学の分野でわかっていたのですが、なにが入っているのかはずっと謎でした。そのうち、そのグラニュールの増減と体液量には関係性があることがわかってきて、これを精製しようという機運が高まってきました。けれども、非常に微量な脳のペプチドを発見するような優れた生理学者さえも「心臓がホルモンを出すわけがない」と決めてかかり、心臓を研究対象にしなかったのです。彼らがその気になって研究していれば、私が1983年に見つけるより10年ぐらい前にANPは見つかっていたのではないかと思います。
医学の世界には、迷信というか先入観のようなものがあるのですね。

岸本 そうでしたか。
それで、ANPの研究を進めていくと、「なぜ心臓にはがんができないのか」というテーマが現れてきたと聞きますが。

寒川 はい。私は1993年に宮崎医科大学から国立循環器病研究センターに移りましたが、そのころから「心臓にがんは起きないよなぁ」という思いがありました。どうしてかとまわりの研究者に聞くと「そりゃ、心臓には血液がいっぱいあるからでしょう」などと大雑把な推測の答えが返ってくるだけでした。
そうしたなか、呼吸器外科医の野尻崇くん(現・国立循環器病研究センター生化学部・ペプチド創薬研究室長)が、私を訪ねてきたのです。彼は、肺がんの手術のとき、心血管系合併症を予防するため患者にANPを投与したところ、合併症の軽減だけでなく、転移による術後再発率までも低下したと言います。そのしくみを、動物実験で調べようと相談しにきたんですね。

岸本 動物実験では、どうなりましたか。

寒川 ANP受容体をもたない悪性黒色腫というがんの細胞を移植したマウスにANPを投与してみたところ、がん細胞に受容体がないにもかかわらず転移を抑えられたのです。そのため、転移を抑える作用は、がん細胞に直接働いているのではなさそうだと考えるようになりました。
そこで、今度は血管の内皮細胞だけでANP受容体が欠損しているマウスにがん細胞を移植したところ、正常マウスに比べて転移がとても増えていたのです。通常では起こらない心臓への転移も起きていました。
これらから、ANPはがん細胞そのものでなく、血管を保護するように作用していて、それにより心臓への転移を防いでいると考えるに至りました。いまも詳しいメカニズムの解明を進めています。

寒川賢治 氏

寒川賢治 氏

国立循環器病研究センター 名誉研究所長・理事長特命補佐

1948年、徳島県生まれ。71年愛媛大学文理学部卒業。76年大阪大学大学院理学研究科博士課程修了。77年宮崎医科大学医学部助手。90年同医学部第二生化学助教授。93年国立循環器病センター研究所生化学部長。96年京都大学大学院医学研究科・医学部教授(併任)、2001年同大学医学部附属病院探索医療センター教授。05年国立循環器病センター研究所副所長、07年同所長、10年国立循環器病研究センター理事・研究所長、18年より現職。専門分野は生化学、内分泌学。心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)やグレリンをはじめ、数多くの生体ペプチドホルモンを発見した研究者として世界的に知られる。受賞は川上賞、高峰譲吉賞、日本内分泌学会賞、岡本国際賞、武田医学賞、上原賞、文部科学大臣表彰科学技術賞、日本学士院賞、慶應医学賞、日本肥満学会賞など多数。趣味はサッカー観戦。

 

脳で見つからなければ末梢組織を探る
胃からグレリンを発見

岸本 もう一つ、寒川先生が発見されたペプチドホルモンのなかで、とりわけ有名なものに「グレリン」がありますね。成長ホルモンの分泌を促進したり、食欲を増進させたりすると聞きます。
グレリンは胃から分泌されるそうですが、どうやってグレリンを見つけたんですか。

寒川 まず、当時の状況として、成長ホルモンの分泌を促進する未知の因子があると言われていました。その時点ではすでに、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)と、成長ホルモンの分泌抑制作用をもつソマトスタチンの二つの存在は知られていました。けれども、ある特定の受容体を介してこれらとは別の作用機序で成長ホルモンの分泌が増えているようなのです。つまり、GHRHやソマトスタチンでない「第三の因子」があるのではないかと考えられていたわけです。
成長ホルモンは脳の下垂体から放出されるので、その未知の因子も脳にあると研究者たちは考え、因子探しの激しい競争を繰り広げました。私たちも後から競争に加わり、「これまでもいろいろ見つけてこれたんだから、私たちが探せばすぐ見つかるだろう」と思っていたんですね。
ところが、いくら探しても脳からは見つかりませんでした。そこで、脳だけでなく末梢も一応は探してみることにしました。主要な臓器を調べていったのです。肺、心臓、腎臓、そして胃……。
すると、胃から非常に強い活性が出てきました。細胞内のカルシウムの増加を測るアッセイなので、最初は何らかの毒性で細胞膜が壊れて、カルシウムが細胞内に流入しているのではないか、と。しばらく胃は放っておいたのですが、後日、あらためて胃に戻ってアッセイに使う量を変えてみたりしました。すると、ある分子量のところで、やはり強い活性が現れたのです。それで、胃で精製を進めて、構造決定に至りました。

岸本 胃からグレリンが出て、それが脳に働くわけですか。

寒川 血液を介して脳に働くという考え方がずっと一般的だったんですが。調べてみると、末梢から脳に伝わる求心性の迷走神経が、胃のグレリンが分泌される細胞の近くまでのびているのです。グレリンが分泌されると、すぐにその神経に働いてその情報が脳の延髄に行き、そして視床下部に働いて、それで食欲促進作用をもたらしたり、成長ホルモンの分泌を促進したりするわけです。

岸本 成長ホルモンの分泌に至るまでの経路は他にあるんですか。

寒川 グレリンが血中を介して下垂体に達する経路があります。胃から中枢に伝達する求心性の神経を切ったラットでは、グレリンを投与しても食欲はまったく刺激されませんが、成長ホルモンの分泌促進活性は切る前の3分の1ぐらいの活性が残ります。

岸本 そうですか。食欲が増えるから背も伸びて成長するとか、そういった単純な考えとはちがうわけですな(笑)。

寒川 ええ。ただし、グレリンの分泌パターンを見てみると、食事前のほか、入眠後にグレリンは増えています。成長ホルモンが出ている時期と一致しますね。

岸本 グレリンは睡眠促進には関与していないのですか。

寒川 睡眠というよりも、グレリンは「安らぎのホルモン」といいますか、副交感神経を刺激すると同時に交感神経を抑制するといった役割があるということが最近わかってきました。
ストレスがかかっている人にグレリンを投与すると食欲が増えるのですが、それは単にお腹が空いたからというより、交感神経が抑制されて気分がよくなり食べたくなるという要素も含まれているのではないかと思っています。

病気との関連性の解明を
そしてさらなるペプチド探索を

岸本 ペプチドホルモンを応用した創薬についてもお聞きします。寒川先生が見つけたANPについては、すでに医薬品に応用されているというお話でしたね。一方で、創薬の分野では、7回膜貫通型受容体(Gタンパク質共役型受容体)の相手となるペプチドホルモンなどのリガンドを探索する研究が進んでいると聞きます。
受容体をすべて調べて、そこからリガンドを見つけだすような方法がとられているのでしょうか。

寒川 その方法は2000年代に、世界中の製薬会社がやっていました。けれども、なかなかうまくいっていないようです。
最近では、生体内の本来のリガンドがわからなくても、ケミカルライブラリーから受容体に作用する分子を探すといったことで研究を進めている製薬企業もあるようです。
けれども、私に言わせてもらえば、受容体に作用して薬として効く分子がわかったとしても、内因性のリガンドがきちんとわからなければ、どのように作用をコントロールしているのかといったことがわからないので、情報伝達系の把握がままなりません。それでは創薬への活用もなかなかうまくいかないのではないかと思っています。

岸本 先生ご自身は今後、どのように研究を進めていきたいと思われていますか。

寒川 私が携わってきたペプチドホルモンと病気との関連性をさらに解明していかなければならないと思っています。
それとともに、これまで私はペプチドホルモンを見つける研究を続けてきました。自分なりに鼻が利く部分はあるのではないかと思っているので、若い人たちと、今後も未知のものを探していきたいという思いはありますね。

岸本 今日は、お話ありがとうございました。

 

EYES

ペプチドホルモンを発見・構造決定し 機序解明や医療応用につなげる

「煮沸」による精製法の確立を原点に、
多種ペプチドの発見・構造解析に成功

体内の特定の組織や器官でつくられ、直接、体液中に分泌されて運ばれ、特定の組織や器官の活動をごく微量で調節する生理的物質を総称して「ホルモン」といいます。ホルモンは、生体がさまざまな環境変化に対応し、内部の状態を一定に保つホメオスタシス(恒常性)を神経系とともに担うなどの重要な役割をしています。

現在のところ100種類ほどの体内物質がホルモンであると確かめられています。ホルモンの分類のしかたの一つとしては化学構造によるものがあり、この分類のなかでも多いのが、複数のアミノ酸がペプチド結合することで構成される「ペプチドホルモン」です。たとえば、膵臓で分泌されて体液のブドウ糖を細胞にとりこむ作用を高めることで血糖値を低下させる働きをもつインスリンは、ペプチドホルモンです。化学構造によるホルモンの分類ではほかに「ステロイドホルモン」や「アミノ酸誘導体ホルモン」などがあります。

研究者たちによる解明なしに、ホルモンが多様に存在することや、様々なしくみ・働きをもっていることは明らかにはなりません。なかでも、ペプチドホルモンの発見と構造決定で、とりわけ多大な貢献を果たしてきたのが、対談記事に登場する寒川賢治氏です。

寒川氏は1981年、氏が「恩師」と呼ぶ松尾壽之氏(現・国立循環器病研究センター名誉研究所長)らと論文発表したペプチドホルモン「α-ネオエンドルフィン」の精製・構造決定を皮切りに、多くの種類のペプチドホルモンを発見し、解明していきます。

その後、寒川氏は、独自のペプチドホルモン探索法として、目指すペプチドが含まれる生体組織を煮沸操作を加えて精製する手法を確立しました。従来のペプチド精製では、組織はまず凍結保存されていましたが、解凍や抽出の過程でプロテアーゼによりタンパク質が分解され、ペプチドに断片化して混入するため、ごく微量の一つのペプチドホルモンを構造決定するには、たとえば数万〜10数万頭の動物の組織を集めて精製しなければならないといった労苦がありました。寒川氏が開発した煮沸操作を加えた方法では、組織中の分解酵素などが瞬時に失活する一方、ペプチドは熱に強いため活性のある状態が保たれます。また、変性タンパク質は簡単に沈殿し除去できるので格段に効率よくペプチドホルモンを精製できるようになりました。

この「煮沸」による精製法により、寒川氏は1984年から1990年にかけて、「心房性ナトリウム利尿ペプチド」(ANP)、「脳性ナトリウム利尿ペプチド」(BNP)、「C型ナトリウム利尿ペプチド」(CNP)という3種のナトリウム利尿ペプチドの精製・構造決定を果たしました。これらは心臓や血管、体液量の恒常性維持などの重要な役割を担います。また、ANPやBNPは、それまでホルモン分泌と無縁と考えれてきた心臓から分泌されるホルモンとしても注目されました。続いて1993年には、全身の組織に広く分布して降圧などの作用を示すペプチドホルモン「アドレノメデュリン」も発見します。さらに寒川氏は1999年、おもに胃で分泌されるペプチドホルモン「グレリン」を発見し、このホルモンがもつ、成長ホルモン分泌や食欲増進などの複数にわたる作用の解明につながる大きな手がかりを示しました。

寒川氏が解明してきたペプチドホルモンをめぐっては、たとえば急性心不全の治療薬「カルペリチド」にANPが応用されるなど、医療への応用も進んでいます。最近では、このANPにがん転移抑制効果があることも分かり研究が進んでいます。今後も、発見されたペプチドホルモンから、生命科学や医療の発展につながる研究が進むものと期待されます。

 

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