LF対談
研究者として、歌人として、 2倍苦しんだけれど、 2倍楽しむことができました No.94(2021.10)
JT生命誌研究館 館長/京都大学 名誉教授
京都産業大学 名誉教授/歌人
永田和宏 氏
公益財団法人 千里ライフサイエンス振興財団
岸本忠三 理事長
物理学科に入学その後、細胞生物学の道へ
岸本 今日は、細胞生物学の研究者としても、そして歌人としても著名な永田和宏先生をお迎えしました。
永田先生とは何年か前、空港で偶然お会いしましたね。隣に僕の妻がいたので「歌人の永田先生です」と紹介したら、先生は「細胞生物学者です」っておっしゃいましたね。今日は研究と歌と、どちらのお話も伺えればと思っています。
永田 よろしくお願いします。
岸本 まず、ご研究のほうから伺います。細胞生物学の分野に進まれた経緯はどういったものでしたか。
永田 岸本先生もご存知かもしれませんが、もともと大学では物理学科だったんですよ。
岸本 湯川秀樹先生のノーベル物理学賞受賞があって、僕も物理をやりたい気持ちもあったけれど、考えたあげく医学部に進みました。先生は、京都大学の理学部物理学科に進んだのですね。
永田 ええ。「物理であれば京大」と思って入学しました。けれども、たちまち物理についていけなくなってしまいまして。大学紛争でキャンパスが完全にロックアウトされてしまったことがまずありました。
もうひとつ、短歌のことがあります。高校時代に2首つくっていたけれど、大学で短歌会をつくることになり、再び歌を詠みはじめたらおもしろくなりまして。
おまけに、短歌会に京都女子大からきていた人が恋人になりまして……。
岸本 長年、いっしょに歩んでこられた奥さまの河野裕子さんですね。
永田 そうです。これ、三重苦って呼んでいるんですが、物理からは落ちこぼれてしまって、学部を卒業して森永乳業の中央研究所に就職しました。今度はそこで研究がおもしろくなり、29歳のとき退社して京大に戻ることになったんです。結核胸部疾患研究所の市川康夫先生(京都大学名誉教授)の研究室に転がり込みました。骨髄性の白血病細胞を、正常な白血球に分化させることで骨髄性白血病を治療する分化誘導療法が脚光を浴びていて、市川先生はその研究をされていました。私にはすでに3歳と1歳の子がいたのですが、3年半ぐらい無給でしたね。
コラーゲン形成に必須のHSP47その場所は小胞体
岸本 その後、永田先生は渡米され、国立衛生研究所(NIH)に所属されたのでしたね。そこでまず、熱ショックタンパク質の一つ、HSP47を発見なさいました。
永田 ええ。NIHでは、細胞外マトリックスの成分で、接着性糖タンパク質「フィブロネクチン」の発見者、ケネス・ヤマダ先生の研究室に入りました。研究室ではみんなフィブロネクチンの受容体の研究をしているのですが、私は競争が嫌いだし、それなら、「フィブロネクチンとおなじく細胞外マトリクスタンパク質であるコラーゲンを研究対象にしよう」と考え、コラーゲンの受容体を得ようとしたんです。
それで、コラーゲンに結合するタンパク質を得てみたところ、それは細胞表面でなく、小胞体の内部にあったんです。がっかりしましたが、「小胞体のなかでなにをやっているんだろう」となりまして。
岸本 それが、HSP47だったわけですか。
永田 はい。小胞体のなかでコラーゲンに結合するこのタンパク質について、はじめはがんとの関係性を見ていました。ところが、ただ温度を上げるだけで、そのタンパク質が増えることがわかってきました。そのころ、東京都臨床医学総合研究所の矢原一郎先生が熱ショックタンパク質の研究をされていて、「このタンパク質もそれではないか」と考えたのです。実際、温度を37℃から39℃に高めると、タンパク質の量がぐんと上がりました。質量が47Kダルトンだったので、HSP47とよんでいます。
コラーゲンはわれわれの生体にあるタンパク質の3分の1ほどを占める、最も多いタンパク質ですが、それに結合する熱ショックタンパク質が小胞体のなかでコラーゲンをつくっていたわけです。
岸本 小胞体が「現場」というわけですね。
永田 ええ。それで日本に帰ってきて、京大でさらに研究を続けました。HSP47が発現しないようにしたマウスを観察すると、10.5日目でほぼ死んでしまいました。コラーゲン線維がなくなっていたのです。さらに驚いたことに、上皮の間にある基底膜も完全になくなっていました。コラーゲンには型があり、主要なものはI型、また基底膜はⅣ型でできていますが、I型にもⅣ型にもHSP47は必要だとわかったのです。
その後、小胞体のなかでHSP47が、コラーゲンと結合し、コラーゲンに特徴的な三重らせん構造の形成を促進しているということがわかってきました。一旦、小胞体から出てゴルジ体に行ったHSP47は、pHが下がることで結合を外して小胞体に戻り、またコラーゲンの三重らせん構造の促進に使われます。一方、小胞体でできたコラーゲンは小胞体の外に出て、さらに細胞外へと分泌されていくわけです。
こうして、HSP47はコラーゲンがつくられるのに必須のタンパク質だということがわかりました。構造解析では遅れをとりましたが、HSP47の機能と概念の重要なところはほぼすべて私たちの研究室で明らかにしたと思っています。
岸本 HSP47は逆に過剰発現すると病気にも関わってくると聞きます。
永田 そうなんです。肝臓、腎臓、肺などのさまざまな部位において、臓器が繊維化してしまう線維疾患の発症に関わっています。HSP47の応答能を低下させると、線維化を抑えられることがわかりました。
いまは製薬企業と医療応用に向けた研究を進めているところです。HSP47をコラーゲンに結合させなくすれば、繊維化を抑えることができることが見えてきたので、そのための低分子化合物を探索しています。
永田和宏 氏
JT生命誌研究館 館長/京都大学 名誉教授
京都産業大学 名誉教授/歌人
1947年、滋賀県生まれ。71年京都大学理学部物理学科卒業後、森永乳業中央研究所研究員。79年京都大学結核胸部疾患研究所講師。84年米国国立衛生研究所(NIH)客員准教授。86年京都大学結核胸部疾患研究所教授(同研究所は以降、胸部疾患研究所、再生医科学研究所に改組)。2010年京都大学名誉教授。同年より京都産業大学総合生命科学部学部長・教授。13年同大学名誉教授。16年同大学タンパク質動態研究所所長。20年JT生命誌研究館館長。専門分野は細胞生物学。日本細胞生物学会会長、国際細胞ストレス学会(CSSI)会長などを歴任。コラーゲン生成に必要な熱ショックタンパクHSP47の発見や、異常タンパク質の認識や分解を含むタンパク質の品質管理機構の解明などで知られる。受賞は紫綬褒章、京都府文化賞・功労賞、京都市文化功労者、京都新聞大賞、ハンスノイラート賞。瑞宝中綬章など。大学生時代から、後に結婚する河野裕子らと本格的に短歌を始め、歌人としても活動。朝日歌壇、歌会始詠進歌選者。歌人としての著書に『近代秀歌』『現代秀歌』など多数。文学関係受賞も多数。長男・長女も歌人。
異常なものを分解・処理
タンパク質の品質管理機構も解明
岸本 HSP47の発見と機能解明に続いて、永田先生は、正常につくられなかったタンパク質が分解・処理されるしくみについても研究してこられましたね。
僕はどちらかというと、きちんとつくられたタンパク質や分子に興味をもってきたけれど、永田先生はうまくつくられなかった場合どうなるかに注目をされた……。
永田 ええ。HSP47の研究で得られたことをより普遍化させて、小胞体におけるタンパク質の品質管理機構とはどのようなものなのかを調べようと考えたのです。
岸本 小胞体で正常につくられなかったタンパク質は、どうなるのでしょう。
永田 タンパク質の折りたたみがうまくいかないなどで正常のタンパク質がつくられないときは、小胞体にストレスがかかっていますし、タンパク質が正しい構造をとれなくなるのです。もし、これをそのまま放置してしまうと、異常なタンパク質の凝集体がつくられ、細胞が死んでしまいます。それではまずいので、どうにか異常なタンパク質を取り除かなければなりません。
岸本 どうやって取り除くのでしょう。
永田 まず、分解すべき異常タンパク質を、小胞体からサイトゾルへ逆輸送し、そこで、分解します。それには小胞体の外にリクルートする因子が重要となります。その因子は2003年、タンパク質の品質管理機構においてわわわれが最初に発見したタンパク質で、EDEMとよんでいます。EDEMは、タンパク質が正しく折りたたまれないとなったら、それを見つけて分解の場へ強制的にタンパク質をもっていく役目を果たしています。
けれども、EDEMだけでは、異常なタンパク質は分解されません。小胞体のなかでタンパク質が折りたたまれるとき、ジスフィルド結合という硫黄原子間の結合が立体構造を保つため、そのままでは異常タンパク質は小胞体の細い膜チャネルを通って、分解の場へ逆輸送することができないのです。
それで、次にわれわれが見つけたのが、このジスフィルド結合を切断する還元酵素です。ERdj5と名づけました。小胞体で初めての還元酵素ということになります。ERdj5は、タンパク質のジスフィルド結合を切断することで、折りたたまれていたタンパク質を1本のポリペプチドにし、チャネルを通しやすくさせます。
また、このとき、ERdj5は、小胞体のなかにあるBiPという代表的な分子シャペロンとも結合します。
このEDEM-ERdj5-BiP複合体により、異常タンパク質は小胞体のなかからサイトゾルにもち出されて、最終的にユビキチン-プロテアソーム系という分解機構で分解されます。小胞体のなかでではなく、外に出されて分解されるという点が大事なところです。
岸本 どんなタンパク質の形成過程にも、「正常に行かなければ外に出して分解する」というしくみが入っているわけですか。
永田 どのタンパク質も作られるプロセスはほぼ同じです。ところが壊れ方(変性)は、さまざまの原因によっていつ、どう変性するか千差万別です。その予期せぬ危機に備えて、タンパク質を修復したり、分解したりする機構をどの細胞も備えています。これを品質管理機構と呼びます。
それぞれの細胞では、1秒間に数万個のタンパク質がつくられ、そのうち相当なものに不良品が生じてしまいます。細胞は、どうも1個1個のタンパク質をきちんと正常につくっていくのでなく、いいかげんでもとりあえずはつくって、だめだったら処分するという戦略をとっているように見えます。
岸本 100%きっちりとこなしていたら、ものすごい量のエネルギーも必要になるでしょうしね。
それで、異常タンパク質を分解するしくみがはたらかないと、凝集体がたまるなどして、さまざまな病気が起きるわけですか。
永田 そのとおりです。代表的な病気としては、神経変性疾患、パーキンソン病、アルツハイマー病などがあります。
岸本 アルツハイマー病については、2021年に日米の企業が共同開発した治療薬が承認されましたよね。それは、アミロイドβプラークを減少させる抗体と聞きますが、これも永田先生の解明したしくみで説明できるわけですか。
永田 アルツハイマー病は、脳内でどんどんつくられていくアミロイドβ凝集体が蓄積することで起きる病気といえます。分解のはたらきを活性化できれば、発症や進行が抑えられる可能性が考えられます。
岸本 治療薬の研究はこれからも続くでしょうが、基礎研究の点では、タンパク質の品質管理機構は解明しきれたのですか。
永田 一つ、大きな問題が残っていました。小胞体は非常に酸化的な環境なのですが、ERdj5は還元酵素です。ERdj5がいかに還元力を得るのかはむずかしい問題でした。
岸本 それも解明なさったんですか。
永田 明らかにしつつあるという段階です。小胞体に入ってきたポリペプチドが折りたたまれるとき、システインが酸化されてジスルフィド結合を作ります。このとき電子が放出されるのですが、この電子が最終的にERdj5に受け渡されて還元力を獲得し、変性したタンパク質の分解に利用されています。
これは、酸化的な場である小胞体に還元力を供給する新たな機構、経路を発見したことになると思っています。小胞体は、酸化反応だけでなく、還元反応の場としても重要だということが、われわれの最近の研究でわかってきました。
研究者であり、歌人であるということ
岸本 お話を聞いて、現在もそうなんだとわかりましたが、永田先生は細胞生物学者と歌人とを両立されておられます。歌人のほうでは、ご著書を多く出されるほか、宮中で開かれる「歌会始」の詠進歌選者をつとめたり、新聞の歌壇欄で選者をつとめたりと活躍されていますね。
僕は、永田先生のことを「研究者と歌人と両方できてええなぁ」と思ってきました。
永田 両方をやるというのはめずらしいのだと思います。新聞記者たちからは、「なんで先生はぜんぜんちがうことを両方やっているのですか」と聞かれます。
私の実感としては、「結局どちらも捨てることができなかった」というのが正直なところなんです。
岸本 そうですか。
永田 後ろめたさはずっとありました。日本には「その道一筋」の美学といったものがあるでしょう。一つのことに打ち込んでいる人こそ偉くて、二つのことをやっているのは中途半端だと見られがちです。
岸本 「一筋」だけでもなかなかできないようなことを、永田先生は「二筋」やっている。これほどの業績を積み重ねてこられたら、先生のことを中途半端だと見る人はだれもいないのでは。
永田 さすがに50歳代後半ぐらいになってからは、科学の話をしているときでも歌の話を振られれば答えるようになりました。でも、以前はそれができませんでした。研究室や教室では絶対に歌の話はしないという「オーラ」みたいなものが私自身からも出ていたのでしょう。研究員も学生もスタッフも歌の話題は一切しませんでした。
後ろめたさをどう克服するかといえば、睡眠時間を削るほかありません。夜遅くまで研究をして、歌のことをやるのは午前1時ごろ家に帰って妻といっしょに食事をとってからでした。70歳代なかばになりましたが、いまもおなじような生活をしていて、寝るのは朝4時ごろです。
「ねむいねむい廊下がねむい風がねむいねむいねむいと肺がつぶやく」という歌を詠んだこともあります。私の一生を総括したら「ねむさだけの一生だったな」ということになると思います(笑)。
結局、「研究と歌と二つをやっていることで後ろ指をさされたくない」という潜在的な恐怖感が自分のなかにありつづけたのです。学生たちに「もっと研究に打ち込め」と言っておきながら、教授は研究とはまた別のことをやっているわけですから。
岸本 だから、空港でお会いしたときも、僕が妻に「歌人の永田先生」と紹介したら、先生は研究者として「細胞生物学者です」とおっしゃったんですね。
僕も30歳になるごろまでは基礎研究者でもあり内科医でもあったけれど、「両方はできないな」と思うようになり、その後の20数年間は研究に専念しました。最後は管理職として内科に戻りましたが、内科での経験が研究の発想に役立つようなこともありました。永田先生の場合は、研究をしている最中に、歌のことばが浮かんでくるようなことはないのですか。
永田 フレーズが出てくることはあります。2021年の歌会始で、私は「若き日の実験ノートに残されて芙蓉のごとき歌の断片(きれはし)」という歌を出しました。かつての実験ノートを見返すと、歌のためのフレーズが書かれてありました。ふと思いついたことを書き留めておいたのだと思います。
けれども、研究をしているときは基本的には歌のことは頭のなかに出てきません。研究と歌とでは、言葉の扱われ方がちがうと思うんです。歌では、言葉と言葉のあいだにある隙間にどういう感情があるかをすくい取りたい。一方、研究では言葉と言葉の間にデジタルな関係性が失われたら成り立ちません。やはりちがうものだとは思いますね。
岸本 逆に、歌で言葉を大切になさっているから、研究でもなにかを命名するときなどに、おなじく言葉を大切にすることもあるのではないですか。
永田 名前をつけることは好きではあります。たとえば、先ほど紹介したEDEMも、異常タンパク質を合成の場から分解の場へと追い出すので「楽園追放」にかけて「エデン」にしようと提案したんだけれど、あっさり拒否されてしまいました(笑)。
ほかにも、分解の標的となるタンパク質をユビキチン化するタンパク質を発見し、UBIN(ユービン)と名付けたあと、それに結合するもう一つのタンパク質をPOST(ポスト:POlyubiquitinated Substrate Transporter)と名付け、協力してはたらくのでUBIN-POST(ユービンポスト)。それを聞いた阪大の吉森保先生が、「次のタンパクを見つけたら、ぜひTakkyubin(宅急便)にしてください」と言いました(笑)。
岸本 やっぱりそういうおもしろ名前をつけておられるんですね。
趣味でやる分には楽しいけれど、本職だと大変なこともある。どちらの本職も一流のことをできていると思えたとき、「どちらもやっています」と言えるわけですね。
永田 いまは二つのことをやってきてよかったと思っています。人の2倍、人生を楽しませてもらったと思うし、一つの分野だけでは得られなかった友人が得られ、いろいろなことをお話することもできていますから。2倍、苦しんだけれど、2倍、楽しむことができた。そんな気がしています。
岸本 今日は、先生のお話を聞いて、僕も続けていこうという感じになりました。どうもありがとうございました。
EYES
小胞体におけるタンパク質の合成と異常タンパク質の分解のしくみを解明
コラーゲン合成に必須のHSP47
異常タンパク質を認識・分解するEDEM-ERdj5-BiP
動植物の細胞質には、平たい袋が積み重なったようなつくりをした小胞体(ER:Endoplasmic Reticulum)があります。生物の教科書などで、細胞核のまわりをひだ状に取り囲んでいる小胞体のイラストに触れてきた人も多いことでしょう。
小胞体には、表面に小さな粒のようなリボソームが無数に付いている粗面小胞体と、リボソームが付いていない滑面小胞体があります。今回は、タンパク質の合成に関わる前者のほうに着目します。
ヒトなどの動物の骨、軟骨、腱、皮膚などを構成するタンパク質として、コラーゲンがあります。ヒトでは総タンパク質の約30%を占める主要なタンパク質です。このコラーゲンが、材料からつくられていく「現場」が小胞体です。
コラーゲンの材料となる分子は、リボソーム内でつくられ、小胞体のなかへと移された3本のペプチド鎖です。この3本鎖が集合して、三重らせん構造をとることで、コラーゲンの原線維がつくられ、それがさらに小胞体の外へと出ていき、さまざまの組織にコラーゲンが分泌されます。
こうしたタンパク質の合成を助ける役割のタンパク質を分子シャペロンといいますが、ではコラーゲンの合成を助ける分子シャペロンはどういったものでしょう。これを解明したのが、4ページからの対談に登場する永田和宏氏です。
永田氏は、米国に留学時代、コラーゲンに結合しているタンパク質を小胞体内で見つけます。このタンパク質を調べたところ、細胞が熱などのストレスに晒されたとき発現が上昇するタンパク質、熱ショックタンパク質の一種であることを1986年に解明しました。「HSP47(Heat Shock Protein 47)の発見」として知られる成果です。その後も永田氏は、HSP47が、3本鎖の三重らせん形成を促進役を果たすなど、コラーゲンの合成に必須であることも解明してきました(図)。
小胞体はまた、タンパク質が合成されるときおこなわれる「折りたたみ」(フォールディング)が正常に起きなかった場合、その異常タンパク質を最終的に処理するしくみも備えています(図)。
EDEM( Endoplasmic reticulum Degradation Enhancing α-Mannosidase-like protein)というタンパク質によって、正しく折りたたまれなかったタンパク質が分解へまわされます。次にERdj5という還元酵素タンパク質がEDEMと協働して正しく折りたたまれなかったタンパク質のS-S結合を切断し、分子シャペロンの一種のBiP(Binding Immunoglobulin Protein)というタンパク質に受け渡して、ついに小胞体から細胞質へ排出して分解するというものです。小胞体でタンパク質が正しくつくられなかった場合のこうした処理のしくみも、永田氏らの研究チームが2000年代前半以降に解明しました。
永田氏は、研究者としてタンパク質の品質管理がいかに細胞でなされるかをめぐるこれらの業績を上げる一方で、歌人として歌壇でも精力的に活動しています。 自ら数多くの短歌を詠むことのほか、宮中歌会始詠進歌選者や朝日歌壇選者などもつとめてきました。対談記事では、細胞生物学の研究ストーリーのほか、研究と短歌の両立させることへの思いなどが展開されています。