LF対談

シアノバクテリアの概日時計では、
KaiCのATPase活性が周期を 決めているとわかってきました No.88(2019.10)

名古屋大学 名誉教授
近藤孝男 氏

公益財団法人 千里ライフサイエンス振興財団
岸本忠三 理事長

周期はおおむね24時間、
温度に依存しない体内の時計

岸本 多くの人が、体内時計や、それにより刻まれる概日リズムというものに興味をもっていると思います。僕も旅行で東西移動が大きいときなどは、眠れなくなったりして、「体内時計がおかしくなっているかな」と考えたりします。なにが概日リズムを決めているのかといった疑問もおもしろいところです。
まず、近藤先生に体内時計や概日リズムがどのようなものか、お聞きします。

近藤 ほぼすべての植物と動物は、細胞内に概日時計とよばれる時計をもっていて、概日リズムが生じています。生物の概日リズムは、刺激をあたえられなくても保たれるのですが、その周期がおおむね24時間となっているわけです。それと、周期が温度に依存せずに常に一定であることも重要な点です。

岸本 生物がだいたい24時間のリズムを刻むというのは、生物がみんな地球にいるからですか。

近藤 そのとおりです。地球は24時間で回っています。それに合わせて私たち人間は機械の時計を24時間周期にしていますが、それとおなじようなことがすべての生物にもいえます。地球上で生きている限りは地球の24時間の自転というものがどうしても重要になります。

岸本 みんな興味をもちますよね。なにが概日リズムを決めているのかといった疑問もおもしろいところです。

ウキクサを対象に
概日リズムを見いだす

岸本 近藤先生は、長らく概日時計の研究をしてこられたわけですが、そもそもどうしてこの分野に進もうと思ったのですか。

近藤 名古屋大学に入学して、「生物学の分野に進みたいな」と思っていました。なかでも大学院に入るときもっとも惹かれていたのは、じつは発生学でした。竹市雅俊先生(現・理化学研究所チームリーダー)も出られた研究室に入ることをめざしていました。ただ、願書を出す直前、太田行人先生(2014年逝去)の植物生理学の講義を聞いて、とてもかっこよく感じたんですね。太田先生は、時間生物学の礎を築かれた方です。「この先生に就こう」と、太田先生の研究室に入りました。

岸本 近藤先生は、最初からシアノバクテリアを対象に概日時計の研究をされたわけですか。

近藤 はじめはウキクサという水生植物からでした。太田先生が名古屋大学で、それに定年後に移られた基礎生物学研究所で、長らくウキクサを対象にしていたこともありまして。

岸本 ウキクサにもリズムがあるんですね。どのようにリズムが刻まれるのでしょうか。

近藤 カリウムの吸収量に概日リズムがあります。ウキクサにとってカリウムは肥料です。昼間に光合成で得られたエネルギーでたくさん吸収をするリズムがあるので、カリウムイオンの濃度を自動で測定する装置を作って、概日リズムの動きを確かめました。14年ほど、ウキクサを相手に研究しましたね。

岸本 14年間もですか!

シアノバクテリアから時計遺伝子
KaiAKaiBKaiCを発見

岸本 その後、対象をウキクサからシアノバクテリアに移されたわけですね。その経緯はどのようなものでしたか。

近藤 1984年に、ショウジョウバエの時計遺伝子であるperiodがクローニングされたのが大きかったですね。ノーベル賞を2017年に受賞したマイケル・ロスバッシュ、ジェフリー・ホール、マイケル・ヤングによる業績です。前々から「いよいよ時計遺伝子がクローニングされるのでは」との噂はありましたが、ついに雑誌に論文が出たわけです。私は「これからは一気呵成に時計遺伝子の解明が進み、問題は片づいてしまうんじゃないか。ウキクサでこのまま研究をしていてもしかたないな」と思いました。けれども、研究で対抗していく上で、対象をショウジョウバエに切り替えても、追いつくのは難しい。より簡単な生物、酵母や大腸菌などの概日リズムを見つけて、分子遺伝学的な解明をしていくべきだと思いました。

岸本 とすると、シアノバクテリアの前に、酵母や大腸菌で研究したのですか。

近藤 はい。どちらも1年ほどをかけてリズムを探したのですが、うまくいきませんでした。どうしたものかと考えていたころ、1986年に、シアノバクテリアにリズムがあるという論文を思い出しました。台湾の研究者たちによるものでした。

岸本 そのシアノバクテリアのリズムは、なにで測ったものだったんですか。

近藤 窒素固定化活性のリズムでした。論文のデータを見ると、温度によって周期が変わらないことが、きれいに示されています。それを見て、私も「シアノバクテリアならうまくいくかな」と思いました。当時、私はアメリカにいましたが、幸運なことにスーザン・ゴールデンというシアノバクテリアの研究者と電話していると、「ルシフェラーゼ(発光酵素)遺伝子を入れたシアノバクテリアがあるから使ってみたら」と言われ、提供してくれたのです。光合成遺伝子のプロモータでルシフェラーゼを発現させるのですが、寒天培地で発光させて、それをカメラで撮影し、自動測定できるようにしたのです。すると、きれいにリズムが現れました。後で分かったのですが、どんなプロモータでもとにかくリズムは出るのです。

岸本 測定装置をご自分で作ったんですか。

近藤 はい。以前からコンピュータ・プログラミングや機械工作もよくやっていましたので。その装置は、12枚のシャーレを回転させて、冷却CCDカメラでコロニーごとに発光する様子を毎時間、自動撮影していくものでした。うまくいったのでシアノバクテリアをEMS(エチルメタンスルホン酸)で処理して遺伝子を変異させ、リズムがおかしくなったコロニーから時計遺伝子を探そうと考えました。

岸本 それで近藤先生は、シアノバクテリアの時計遺伝子を見つけていったわけですね。kaiAkaiBkaiCっていう……。

近藤 そうです。振り返ると、わりと早く、kai遺伝子を見つけることができました。

岸本 ショウジョウバエではすでに時計遺伝子のperiodが見つかっていて、概日リズムのしくみのモデルもあったんですよね。タンパク質が時間帯ごとに、転写を促進したり制御したりして、それで概日リズムが刻まれるという……。シアノバクテリアで時計遺伝子を見つけたとき、近藤先生はこの既存のモデルはやはり気になりましたか。

近藤 はい。すでにあるモデルには“洗脳”されるものですね。シアノバクテリアにも、ショウジョウバエでのモデルが当てはまることを確かめようとしました。ショウジョウバエの概日時計で言われていたネガティブフィードバックがうまくかかるので、「ショウジョウバエとおなじモデルで説明できるだろう」と考え、『サイエンス』に論文を出しました。アメリカから名古屋大学に戻ってきて3年目の、1998年のことです。

岸本 でも、シアノバクテリアの概日時計のしくみがショウジョウバエとおなじというのは、あまりおもしろくはありませんね。

近藤 おもしろくないです(笑)。

Kaiタンパク質とATPだけでリズムが現れた

岸本 けれども、本当はしくみはおなじではなかったんですよね。

近藤 はい。研究が大きく動いたのは2004年、私の研究室の大学院生だった冨田淳さん(現・名古屋市立大講師)と助手の岩崎秀雄さん(現・早稲田大学教授)による偶然の発見でした。彼らは、シアノバクテリアのリズム同調について研究していました。シアノバクテリアのリズムは、24時間のうち12時間を暗くすると同調できます。それで彼は、暗い時間帯にシアノバクテリアのKaiタンパク質や遺伝子発現がどうなっているかを調べていました。シアノバクテリアは光独立栄養生物でして、光がないとエネルギーを取り込めませんので遺伝子発現が起きません。では、Kaiタンパク質の状態はどうなっているかと測ったわけです。すると、連続暗条件でもKaiCのリン酸化のリズムは保たれていたのです。暗いのでKaiCの遺伝子発現が完全に抑えられているにもかかわらず。

岸本 ショウジョウバエのモデルとはちがっていた。おもしろくなりましたな。

近藤 ええ。ショウジョウバエでは、さきほど岸本先生がおっしゃった、転写・翻訳フィードバックループというモデルで概日リズムが説明されていて、私どもはシアノバクテリアにもこのモデルが当てはまると思い込んでいたわけですが、シアノバクテリアでは転写・翻訳の過程がなくても、時計が動いているということが見つかったわけです。これも論文にして『サイエンス』に発表したところ、かなりセンセーショナルに受け止められました。

岸本  すると、シアノバクテリアでは、どのように時計が動いているのか、といったことが焦点になりますね。

近藤 ええ。研究室のメンバーらとともにディスカッションしました。そのなかで、「タンパク質自体にリズムが生じている可能性もあるだろう」といったアイデアが出てきました。KaiA、KaiB、KaiCの各タンパク質は精製してあるし、細胞内濃度のデータも大体はあるので、それらをもとに混ぜてリン酸化のしかたを測定してみることにしました。研究室のメンバーに手分けしてもらい、3か月ほど経ったでしょうか。ポスドクだった中嶋正人さん(現・近畿大学助教)と西脇妙子さん(現・名古屋大学准教授、大川妙子氏)が、にこにこしながらゲルを持ってきまして。KaiA、KaiB、KaiCのタンパク質とATP(アデノシン3リン酸)だけでKaiCタンパク質にリン酸化のリズムが現れたのです。

 

近藤孝男 氏

近藤孝男 氏

名古屋大学 名誉教授

1948年、愛知県生まれ。71年名古屋大学理学部生物学科卒業。76年名古屋大学理学研究科生物学専攻満了。78年基礎生物学研究所制御機構研究系助手。85年ハーバード大学客員研究員。90年バンダービルド大学客員研究員。95年名古屋大学大学院理学研究科生命理学専攻教授。99年東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻教授。2006年名古屋大学大学院理学研究科研究科長。08年名古屋大学高等研究院院長。13年名古屋大学名誉教授。名古屋大学理学研究科特任教授。14年国立大学法人山口大学客員教授。専門分野は時間生物学、植物生理学。大学院時代から一貫して概日時計の研究を続け、シアノバクテリアから時計遺伝子kaiAkaiBkaiCの同定に成功。その後も、時計機構のメカニズム解明を進める。受賞は、中日文化賞、朝日賞、紫綬褒章、学士院賞、内藤記念科学振興賞、Gilbert Morgan Smith Medal(Natl. Acad. Sci., USA)など多数。趣味は、登山(20歳代まで)、機械工作。

振り子時計をモデルに概日時計のしくみを考える

岸本 その後は、Kaiタンパク質の概日リズムは、なにによって決まるのかが研究課題になったわけですね。

近藤 はい。そのしくみを考えるのに、10年以上、悪戦苦闘してきました。
KaiCタンパク質には2つのATPase(アデノシン3リン酸分解酵素)があって、CⅠATPaseとCⅡATPaseとよんでいます。CⅡATPaseの下流にはスレオニンとセリンという2つのアミノ酸が並んでいますが、この隣り合った2つのアミノ酸が順にリン酸化されます。まず、スレオニンがリン酸化されると、次にセリンもリン酸化されます。両方リン酸化されると、KaiBタンパク質がそのスイッチを切り替えスレオニン続いてセリンの脱リン酸化が起こります。KaiCタンパク質ではこのようなリン酸化リズムが生じています。

岸本 それが、おおよそ24時間の周期で起きるわけですか。

近藤 はい。

岸本 すると、だれもが思うのは、なにが引き金になって、そのリン酸化のリズムが生じているのか、ということですが……。

近藤 はい、そうですね。最初、私達はこのリン酸化サイクル自体に注目していたのですが、結局わかったのは、リン酸化サイクルは本来約24時間のリズムよりもずっと短くて、しかも温度によって周期が変わるということでした。リン酸化サイクル自体が、ペースメーカーの機能を担っているわけではなかったわけです。

岸本 すると、なにが時計の機能を担っているのですか。

近藤 最後に残されたのは、ATPaseです。研究室では、ATPaseの活性測定は最後の最後にやればいいといった優先順位の低い位置づけでした。その測定をポスドクの寺内一姫さん(現・立命館大学教授)がしてみると、ATPaseの活性こそが周期を決めているとわかってきたのです。
彼女が測ってみると、1日に1分子あたりATPをわずか10〜15個くらいしか分解しないのです。わずかなエネルギーで持続するということは、長期に持続する時計機構への関与を暗示します。彼女はさらにごくわずかな活性を正確に測り、温度を変えても活性は変わらないということを確かめてくれました。

岸本 ATPaseの活性が重要だったわけですね。

近藤 はい。さらに驚いたことがありまして。ATPase活性が非常に低いことがわかったので、今度は周期が40時間や15時間といった変異体についてもKaiCタンパク質のATPaseを測ってと、寺内さんにお願いしました。それで、私が学会に出発する日、彼女が私の机に置いたデータの数値を見ました。縦軸に活性、横軸に周期をとってプロットするとカーブを描いています。「ひょっとして」と思って、横軸の周期を逆数、つまり振動数にしてみたところ、数個あるデータが0を通って一直線上に乗ったのです。つまり、ATPase活性が時計の速さに比例していたことになります。これは、ATPaseが概日時計の周期を決めていることを意味します。
私にとっては答が出たようなものでした。つまり、周期を決めていて、かつ温度の影響を受けないようにしているのは、KaiCタンパク質のATPaseなのだ、と。

岸本 試験管内には、KaiCタンパク質しかないわけですよね。すると、どのようにATPaseが周期をつくっているのか……。

近藤 私もそれをずっと考えていました。そしてある晩、ふと「これは機械時計のしかけを勉強したほうがいいだろう」と思い立ち、内部の機械じかけがすべて見える振り子時計を買ってみることにしたのです。突然、アマゾンで4、5万円の買いものをしたので家内には叱られましたが(笑)。

岸本 機械時計を観察したわけですね。どんなことが得られたんですか。

近藤 振り子時計では「振り子」と「ゼンマイ」の2つの要素が大切で、それぞれに役割をもっているということです。
振り子のほうは、小さく振れても大きく振れても周期が変わらない、つまり等時性を保つという役割をしています。この当時性があるからこそ、振り子時計は正確に時を刻むわけです。しかし、振り子はあまりエネルギーをもっていないから、そのままにしておくと動きが失われてしまいます。そこで、ゼンマイの役割が大切になってきます。つまり、ゼンマイは針を動かすだけでなく、振り子にエネルギーをあたえるという役割も担っているわけです。
振り子は、自分の都合のよいときにわずかなエネルギーをゼンマイからもらえば、止まってしまうことなしに時を刻みつづけるわけです。

岸本 すると、KaiCタンパク質のATPaseでは、なにが「振り子」と「ゼンマイ」に該当するのですか。

近藤 そこのところはむずかしく、まだ結論は出ていません。CⅠドメインのATPaseのほうにペースメーカーとなる振り子のシステムがあるということは見えています。CⅠのATP分解エネルギーが分子構造に歪みを生じさせ、自身のATP分解活性を制御することで、安定したペースが保たれている可能性があります。一方、CⅡのATPaseのほうは、KaiAタンパク質とKaiBタンパク質と協働してリン酸化サイクルを駆動しています。このサイクルのどこかがCⅠによりタイミングを制御されCⅡの周期が安定した24時間になります。CⅡの周期がCⅠと同じになりますので、CⅡはCⅠにエネルギーを供給することが出来ます。しかし、どの領域のどんなアミノ酸がCⅠとCⅡをどのように噛み合わせているのかといったことは、まだわかりません。
また、CⅠにおける「振り子」がどのように動いているのかを決定することも重要です。

岸本 近藤先生にお聞きして、シアノバクテリアの概日時計のしくみが、ショウジョウバエやほかの多くの生物とは基本的に異なるということがよくわかりました。すると、シアノバクテリアに特徴的な概日時計のしくみは、ほかの生物ももっているものなのかということが気になりますね。

近藤 誤解をおそれず言えば、ショウジョウバエや哺乳類などの体内時計にも、シアノバクテリアのようなしくみが隠れているのではないかと、私自身は思っています。それをまだ見つけられていませんが。

岸本 シアノバクテリアのATPaseのようなしくみを、哺乳動物などでも見つけていくことになりますか。

近藤 私にとって残された研究の時間はそう多くはありませんが、見つかったら素晴らしいなと思います。

岸本 私は80歳ですが、近藤先生はまだ70歳。10年ちがいますから、これからもご活躍を期待しています。今日はありがとうございました。

 

EYES

タンパク質だけでつくられる 体内時計のしくみを シアノバクテリアから見いだし、解明

概日時計の研究に新たな概念もたらす

地球上で生きる生物のほとんどは、細胞に「時計」をもっており、その時計が刻むリズムに沿って生理現象がおこなわれます。たとえば、私たちヒトが夜になると眠くなるのも、私たちの体内にある時計のはたらきによるものと考えられています。

生物のもつ時計は「概日時計」とよばれます。「概日」とは「おおむね一日」のこと。約24時間の安定した周期が保たれる点が、概日時計の特徴のひとつです。また、概日時計は、温度が高かろうと低かろうと、つねに一定の周期でリズムを刻みます。温度補償性とよばれるこの性質も、概日時計がもつ特徴です。

概日時計をめぐる研究は、1729年にフランスの研究者がオジギソウの葉の動きが暗やみでも約24時間周期になっていることを発見したことが端緒とされます。その後、現代の研究ではモデル動物のショウジョウバエを対象にしたものが有名になりました。1984年、米国の2つの研究チームが概日時計のリズムにかかわる「period遺伝子」を発見したのです。その後もショウジョウバエや哺乳類から多くの時計遺伝子が発見されるなどして研究が進みます。その結果、概日時計のしくみのモデルが築かれました。それは、時計遺伝子の転写と翻訳を介したフィードバック機構により、時計遺伝子みずからの転写が制御されるというもの。これにより昼に転写が活性化し、夜に転写が抑制されるといった概日リズムが刻まれます。このモデルは「転写翻訳フィードバックループ」とよばれ、現在では多くの生物の概日時計がこのモデルで説明されています。

一方で、対談記事に登場する近藤孝男氏は、原核生物のシアノバクテリアにおける概日時計のしくみ解明に取り組んできました。近藤氏は1990年代、発光遺伝子を組み込んだシアノバクテリアの発光でリズムの測定ができることをまず確認します。そして、正常な概日リズムを刻むシアノバクテリアとリズム周期が異なる変異体の遺伝子の比較から、3つの時計遺伝子を同定し、kaiAkaiBkaiCと命名しました。kaiは「時計の回転」にちなんだものです。

この時点では、近藤氏も「転写翻訳フィードバックループ」がシアノバクテリアにも当てはまるだろうと考え、研究を進めていました。ところが、このモデルだけでは、シアノバクテリアの概日時計の概日性や温度補償性を説明するのが困難になりました。kai遺伝子がもたらすタンパク質が、転写翻訳のフィードバックをもたらすとは考えづらかったのです。

研究を進めるなか、近藤氏の研究チームは2005年、kai遺伝子の発現がなくてもKaiCタンパク質のリン酸化のサイクルが保たれることを発見しました。そこで、KaiA、KaiB、KaiCのタンパク質と、ATP(アデノシン3リン酸)のみを試験管内で混ぜてみたところ、これだけでリン酸化サイクルが概日リズムをもって発生することを見いだしました。つまり、ショウジョウバエやほかの生物に見られる「転写翻訳フィードバックループ」とは異なるしくみで、シアノバクテリアの概日時計が機能していることを示したのです。概日時計の機能は、生きた細胞がもたらすものとばかり考えられていましたが、タンパク質が概日時計の役割をもつこともあるということになります。近藤氏のこの発見は、概日時計の研究分野全体に大きなインパクトをあたえ、新たな概念をもたらしました。

現在も、近藤氏はおもにKaiCタンパク質に着目し、より詳しく時計が機能するしくみの解明を進めています。KaiCタンパク質を構成する2つのATPase(アデノシン3リン酸分解酵素)がその鍵を握っていると考えています。

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