第8回「多能性幹細胞(ES/iPS細胞)の再生医学と医薬品開発への利用と今後の展望」
第7回「膵β細胞の再生による糖尿病治療
−膵外分泌細胞から内分泌細胞へのリプログラミングは可能か−」
第6回「骨・軟骨の再生:基礎研究から臨床応用へ」
第5回「iPS細胞を用いた神経再生戦略」
第4回「幹細胞と再生医学」
第3回「クローンの逆襲 ー核移植技術でしか成し遂げられないものとは?ー」
第2回「多能性を規定する転写因子ネットワークの構造」
第1回「再生を科学する−プラナリアの再生からiPS細胞まで」


第8回講演会
第8回「多能性幹細胞(ES/iPS細胞)の再生医学と医薬品開発への利用と今後の展望」
講師:中辻 憲夫  京都大学 物質−細胞統合システム拠点長/再生医科学研究所 教授
開催::平成21年12月3日(木)

 幹細胞の中でも特に注目を浴びる多能性幹細胞株(ES細胞株/iPS細胞株)は、無制限の増殖能力によって莫大な数の細胞を無尽蔵に供給する能力を持つだけでなく、体を作るすべての種類の細胞と組織に分化して作り出す多能性を持っている。従って、多能性幹細胞を未分化な状態で大量に増殖させ、必要に応じて様々な遺伝子改変を加えたのち、目的とする細胞種へと分化させ、必要な機能を果たす分化細胞を集めて、移植治療や創薬スクリーニングなどの用途に活用できる。我々は、国内で唯一ヒトES細胞株の樹立に成功して、2003年から全国の研究者への無償分配を行っているが、日本に特有の様々な困難がある。
 創薬研究においては、様々な種類のヒト細胞を使用することが不可欠である。新薬開発や安全性試験、毒性試験などの研究材料として必要なヒト組織細胞の入手と供給には大きな制限があるが、多能性幹細胞株は大量に増殖させた後に必要とする細胞を作ることができる。さらには、特定の試験目的のために遺伝子改変を行った疾患モデル細胞などを作ることも可能である。我々は、サルやヒトES細胞を用いた安定な遺伝子導入方法、発現を制御できるTet-ON/OFF系、同時に2種類以上の遺伝子を組み込んで発現させる遺伝子ベクター、変異遺伝子導入による神経変性疾患モデル細胞開発、心筋や肝細胞分化による新薬候補の毒性試験系の開発などに取り組んできた。
 これらの研究に並行して、近い将来臨床応用に使用可能な品質保証されたヒトES細胞株を作り出すために、フィーダー細胞を使わない合成培地による培養維持方法の確立、ヒトES細胞用細胞プロセシングセンター構築やGMP基準などのシステム作りを進めている。将来的には、様々なHLAタイプを集めた多能性幹細胞株バンクを構築すれば、多くの患者が広く恩恵を受ける形で、細胞移植治療における免疫拒絶反応を軽減できる可能性がある。


【講師略歴】
 1972年   京都大学理学部卒業
 1974年   京都大学大学院理学研究科修士課程 修了
 1977年   京都大学大学院理学研究科博士課程 修了(理学博士)
 1978年   スウエーデン ウメオ大学 助手
 1978年   米国 マサチューセッツ工科大学 ポストドク研究員
 1980年   米国 ジョージワシントン大学医学部 研究員
 1983年   英国 ロンドン大学MRC哺乳類発生学部門 客員研究員
 1984年   明治乳業ヘルスサイエンス研究所 主任研究員のち研究室長
 1991年   国立遺伝学研究所 教授
 1999年   京都大学再生医科学研究所 教授
 2003-2007年 京都大学再生医科学研究所 所長
 2007年〜  京都大学物質?細胞統合システム拠点長(再生医科学研究所教授兼務)





第7回講演会
第7回「膵β細胞の再生による糖尿病治療−膵外分泌細胞から内分泌細胞へのリプログラミングは可能か−」
講師:宮崎 純一  大阪大学大学院医学系研究科分子治療学講座(幹細胞制御学分野) 教授
開催::平成21年9月3日(木)


 糖尿病は、血糖値を下げるインスリンの相対的あるいは絶対的不足により起こる。膵臓移植や膵島移植は抜本的な治療法であるが、ドナー不足が問題である。そのため、膵β細胞をin vivoで再生させようとする試みに大きな期待がもたれている。最近の報告で、β細胞そのものが、ある程度増殖能を有していることが示されたが、β細胞をin vivoあるいはin vitroで増殖させることは、今のところ困難である。一方、in vivoで、β細胞の再生が起こることが知られている。例えば、膵管を結紮することにより、外分泌線細胞が膵管細胞に“分化転換”(acino-ductal transdifferentiation)を起こし、その一部がインスリン産生細胞に変化する。このようなときにPdx-1陽性細胞が出現し、それらの細胞がβ細胞へ分化することがあるとされている。このPdx-1は膵臓の発生分化に必須の転写因子として知られている。膵外分泌細胞にアデノウイルスベクターを用いてPdx-1, Ngn3, MafAという3つの転写因子を導入すると、外分泌細胞がインスリン産生細胞にリプログラムされたという報告がある。また、膵管結紮を行った成体マウス膵から膵島のすべての細胞になることのできるNgn3陽性の膵前駆細胞が同定されたとの報告も出ており、in vivoの膵β細胞の再生が注目されている。
 われわれは、Tet-Offの系でPdx-1を発現制御可能なマウスとElastase-creトランスジェニックマウスを交配させ、その仔マウスの膵組織の観察を行った。テトラサイクリンを飲用水に加えPdx-1の発現を抑制して交配を行った場合、膵組織は正常であったが、成体マウスにおいてPdx-1を過剰発現させた場合、免疫組織学的変化の検討により、膵外分泌細胞が次第に膵管細胞に“分化転換”し、さらに増殖後、その一部が内分泌前駆細胞を介して膵島内β細胞に再分化することが示された。この研究から“分化転換”あるいは“リプログラミング”の分子機構の解明が進むものと期待される。
 このように、組織幹細胞、あるいは分化転換を用いた再生研究も進展している。患者自身の細胞からβ細胞を再生することになるので、成功すれば、免疫拒絶などの心配も不要で、究極的な治療になるものと期待される。本講演では、以上のようなβ細胞を再生する研究の現状と展望を、我々のデータとともに紹介する。


【講師略歴】
昭和53年 京都大学大学院理学研究科修了(理学博士)
昭和58年 大阪大学医学部卒業
昭和58年 大阪大学医学部附属病院第4内科医員(研修医)
昭和59年 米国国立衛生研究所(NIH)に留学、Visiting Associate
昭和62年 熊本大学医学部附属遺伝医学研究施設・助教授
平成 3年 東京大学医学部 疾患遺伝子制御(サンド)講座・教授
平成 6年 東北大学加齢医学研究所 遺伝子導入研究分野・教授
平成 8年 大阪大学医学部栄養学講座・教授
平成13年 (配置替え)
     大阪大学大学院医学系研究科 分子治療学講座(幹細胞制御学分野)・教授





第6回講演会
第6回「骨・軟骨の再生:基礎研究から臨床応用へ」
講師:吉川 秀樹  大阪大学大学院医学系研究科器官制御外科学(整形外科) 教授
開催:平成 21年5月28日(木)


人口の高齢化に伴い、骨粗鬆症による大腿骨頚部骨折や脊椎圧迫骨折が増加している。また変形性関節症に対し人工関節置換術が普及したが、長期経過後や関節近傍の骨粗鬆化により、人工関節のゆるみや、母床骨の吸収などの合併症をしばしば惹起する。また、骨の感染や骨腫瘍に対する病巣切除や外傷などにより生じた大きな骨欠損の補填にも骨の再生が必要である。一方、スポーツの普及により、関節軟骨損傷が増加し、早期のスポーツ活動への復帰や、将来の変形性関節症の予防には、軟骨の再生が必要である。従来から、骨・軟骨の欠損部には、骨盤や膝関節などから自己の骨・軟骨をブロックとして採取して、組織移植治療を行ってきた。しかし、健康な部位から骨や軟骨を採取する手術を余儀なくされること、大きな欠損に対しては、自家組織では対応できないことから、骨・軟骨の再生医療が期待されている。まず、骨・軟骨は力学的強度を要する組織であることから、再生の足場としての人工骨や人工軟骨(マトリックス)の開発が必要である。また、骨・軟骨損傷を早期に治癒・再生させるためには、足場材料に細胞や蛋白質をハイブリッドさせたtissue engineeringの技術開発が必要である。さらに、任意の部位・大きさの骨・軟骨欠損を再生させるため、コンピューターを用いた形態シミュレーション技術の開発が進められている。本講演では、骨・軟骨再生研究の進歩、骨・軟骨再生医療の現状と将来展望について解説する。


(文献)
1. Tamai, N., Myoui, A., Tomita, T., Nakase, T., Tanaka, J., Ochi, T., Yoshikawa, H.: Novel hydroxyapatite ceramics with an interconnective porous structure exhibit superior osteoconduction in vivo. J Biomed Mater Res, 59:110-117, 2002.

2. Akita, S., Tamai, N., Myoui, A., Nishikawa, M., Kaito, T., Takaoka, K., Yoshikawa, H.: Capillary vessel network integration by inserting a vascular pedicle enhances bone formation in tissue-engineered bone using interconnected porous hydroxyapatite ceramics. Tissue Eng, 10:789-795, 2004.

3. Nishikawa, M., Myoui, A., Ohgushi, H., Ikeuchi, M., Tamai, N., Yoshikawa, H.: Bone tissue engineering using novel interconnected porous hydroxyapatite ceramics combined with marrow mesenchymal cells: Quantitative and tree-dimentional image analysis. Cell Transplant, 13:367-376, 2004.

4. Kaito, T., Myoui, A., Takaoka, K., Saito, N., Nishikawa, M., Tamai, N., Ohgushi, H., Yoshikawa, H.: Potentiation of the activity of bone morphogenetic protein-2 in bone regeneration by a PLA-PEG/hydroxyapatite composite. Biomaterials, 26:73-79, 2005.

5. Tamai, N., Myoui, A., Hirao, M., Kaito, T., Ochi, T., Tanaka, J., Takaoka, K., Yoshikawa, H.: A new biotechnology for articular cartilage repair: subchondral implantation of a composite of interconnected porous hydroxyapatite, synthetic polymer (PLA-PEG), and bone morphogenetic protein-2 (rhBMP-2). Osteoarthr Cartilage, 13: 405-417, 2005.

6. Yoshikawa, H., Myoui, A.: Bone tissue engineering with porous hydroxyapatite ceramics. J Artif Org, 8:131-136, 2005.

7. Kaito, T., Mukai, Y., Nishikawa, M., Ando, W., Yoshikawa, H., Myoui, A.: Dual hydroxyapatite composite with porous and solid parts: Experimental study using canine lumbar interbody fusion model. J Biomed Mater Res, 78:378-84. 2006

8. Ando, W., Tateishi, K., Hart, DA, Katakai, D., Tanaka, Y., Nakata, K., Hashimoto, J., Shino, K., Yoshikawa, H., Nakamura, N.: Cartilage repair using an in vitro generated scaffold-free tissue-engineered construct derived from porcine synovial mesenchymal stem cells. Biomaterials, 28:5462-5470, 2007.

9. Ando, W., Tateishi, K., Katakai, D., Hart, D.A., Higuchi, C., Nakata, K., Hashimoto, J., Fujie, H., Shino, K., Yoshikawa, H., Nakamura, N.: In vitro generation of a scaffold-free tissue-engineered construct (TEC) derived from human synovial mesenchymal stem cells: Biological and mechanical properties, and further chondrogenic potential. Tissue Eng, 14:2041-2049, 2008.



【講師略歴】

昭和54年 3月 大阪大学医学部医学科卒業
昭和58年 3月 大阪大学大学院医学研究科博士課程修了(医学博士)
昭和59年 9月 米国 Kansas 大学病理学教室研究員
昭和61年 1月 大阪大学医学部助手(整形外科)
平成 3年 9月 米国Memorial Sloan-Kettering Cancer Center文部省在外研究員
平成 4年 3月 大阪大学医学部助手(整形外科)
平成 5年 9月 大阪大学医学部講師(整形外科)
平成 7年 4月 大阪府立成人病センター整形外科部長
平成10年 9月 大阪大学医学部講師(整形外科)
平成11年11月 大阪大学大学院医学系研究科器官制御外科学(整形外科)教授
平成21年 2月 大阪大学医学部附属病院 副病院長(兼任)




第5回講演会
第5回「iPS細胞を用いた神経再生戦略」
講師:岡野 栄之  慶応義塾大学医学部 生理学教室 教授
開催:平成 21年3月3日(火)

神経系の再生とは軸索再生、細胞補充、機能再建の3つの概念を含むものとして理解できる(Okano, Semin Cell Dev Biol., 2003)。損傷後の中枢神経系に選択的あるいは量的に多く誘導される軸索再生阻害因子は、@ミエリン由来因子(NOGO, MAG, OMgp)、A反応性アストロサイトに起源を持つグリア瘢痕由来因子(CSPG)、B繊維性瘢痕由来因子(Semaphorin3A)に大別できる。この中で我々はSemaphorin3Aに対する選択的阻害剤を用いて、rat完全脊髄切断モデルにおいて、後肢の運動機能に密接に関わる青斑核-脊髄路のような中枢神経系の軸索束の再生誘導を誘導することができた。興味深いことにここで再生した軸索は脊髄内であるにも拘わらずシュワン細胞による末梢神経系タイプの髄鞘を有していた。Semaphorin3Aがシュワン細胞の移動に大きく関与し、この作用を阻害することは損傷した中枢神経系の再髄鞘化を誘導できることが明らかになった(Kaneko et al., Nature Medicine, 2006)。本講演では、Semaphorin3A阻害剤以外にも、神経堤幹細胞の分離とその分化能(Nagoshi et al. Cell Stem Cells, 2008)と脊髄再生への応用、ES細胞とiPS 細胞の神経分化とその脊髄再生への応用、さらにはMRIを用いた拡散テンソル・tractographyを用いた脊髄および末梢神経系の軸索の可視化(Fujiyoshi et al., J. Neurosci, 2007)とその再生研究への応用についても話したい。

文献
1) Naka H, Nakamura S, Shimazaki T, Okano H: Requirement for COUP-TFI and II in the temporal specification of neural stem cells in central nervous system development. Nature Neurosci 11 (9): 1014-1023, 2008

2) Nagoshi N, Shibata S, Kubota Y, Nakamura M, Nagai Y, Satoh E, Okada Y, Mabchi Y, Katoh H, Okada S, Fukuda K, Suda T, Matsuzaki Y, Toyama Y, Okano H.: Ontogeny and Multipotency of Neural Crest-Derived Stem Cells in Bone Marrow, Dorsal Root Ganglia and Whisker Pad of Adult Rodents. Cell Stem Cell. 2: 392-403, 2008.

3) Fujiyoshi K, Yamada M, Nakamura M, Yamane J, Kato H, Kitamura K, Kawai K, Okada S, Momoshima S, Toayama Y, Okano H: In Vivo tracing of neural tracts in the intact and injured spinal cord of marmosets by diffusion tensor tractography. J. Neurosci.27: 11991-11998, 2007.

4) Okada S, Nakamura M, Katoh H, Miyao T, Shimazaki T, Ishii K, Yamane J, Yoshimura A, Iwamoto Y, Toyama Y, Okano H.: Conditional ablation of Stat3 or Socs3 discloses a dual role for reactive astrocytes after spinal cord injury. Nat Med.12:829-834, 2006.

5) Sawamoto, K., Wichterle H, Gonzalez-Perez O, Cholfin JA, Yamada M, Spassky N, Murcia NS, Garcia-Verdugo JM, Martin O, Rubenstein JL, Tessier-Lavigne M, Okano H, Alvarez-Buylla, A: New neurons follow the flow of cerebrospinal fluid in the adult brain. Science 311: 629-631, 2006.

6) Kaneko S, Iwanami A, Nakamura M, Kishino A, Kikuchi K, Shibata S, Okano HJ, Ikegami T, Moriya A, Konishi O, Nakayama C, Kumagai K, Kimura T, Sato Y, Goshima Y, Taniguchi M, Ito M, He Z, Toyama Y, and Okano H: A selective Sema3A-inhibitor enhances regenerative responses and functional recovery of the injured spinal cord. Nat. Med. 12: 1380-1389, 2006.


【講師略歴】
昭和58年 3月 慶応義塾大学医学部 卒業
昭和58年 4月 慶應義塾大学医学部生理学教室(塚田裕三教授)助手
昭和60年 8月 大阪大学蛋白質研究所(御子柴克彦教授)助手
平成元年10月 米国ジョンス・ホプキンス大学医学部生物化学教室研究員
平成 4年 4月 東京大学医科学研究所化学研究部(御子柴克彦教授)助手
平成 6年 9月 筑波大学基礎医学系分子神経生物学  教授
平成 9年 4月 大阪大学医学部神経機能解剖学研究部 教授
  (平成11年4月より大学院重点化に伴い大阪大学大学院医学系研究科教授)
平成13年 4月 慶應義塾大学医学部生理学教室 教授 〜 現在に至る
平成15年より21世紀型COEプログラム
     「幹細胞医学と免疫学の基礎・臨床―体型拠点」拠点リーダー




第4回講演会
第4回「幹細胞と再生医学」
講師:仲野 徹  大阪大学大学院 医学系研究科 幹細胞病理学 教授
開催:平成 20年11月7日(金)

我々のからだが潜在的に有している再生能を活かして医療に用いよう、という再生医学が脚光をあびています。からだから取り出した細胞や組織を対外で増幅し、壊れたパーツを取り替えるように移植できたら、高齢化社会になって増加する変性疾患の治療に用いることができる、と期待されているのです。そのために、幹細胞とよばれる未分化な細胞が使われます。幹細胞には、大人になってからもいろいろな臓器に存在している臓器幹細胞(=成体幹細胞)と、初期胚から樹立されたES細胞(胚性幹細胞)や最近話題になっているiPS細胞といった多能性幹細胞があります。これらの細胞を上手に利用しよう、と、世界中でいろいろな研究が精力的におこなわれています。
今回の講演では、幹細胞の研究を中心に、再生医学とは何なのか?幹細胞で何ができるのか?再生医学の現状はどうなっているのか?医療に応用するにはどのような問題点があるのか?など、わかりやすく解説いたします。少し基礎的な話になりますが、マスコミでよく話題になる再生医学について、ご理解いただくよい機会になると考えています。


【講師略歴】    
1981年 3月 大阪大学医学部 医学科 卒業
1981年 7月〜1984年 6月 内科医として勤務
1984年 7月〜1988年12月 大阪大学医学部 バイオメディカルセンター
腫瘍病理部門(北村 幸彦 教授)助手
1989年 1月〜1990年11月 ヨーロッパ分子生物学研究所(EMBL)
Differentiation Programme (Thomas Graf 教授) 訪問研究員
1990年11月〜1995年 6月 京都大学医学部 医化学第一教室(本庶 佑 教授) 講師
1995年 7月〜2004年 3月 大阪大学微生物病研究所 遺伝子動態研究部門 教授
2004年 4月〜現在 大阪大学大学院生命機能研究科 時空生物学
大阪大学大学院医学系研究科 病理学 教授



第3回講演会
第3回「クローンの逆襲 ー核移植技術でしか成し遂げられないものとは?ー」
講師:若山 照彦
    理化学研究所 神戸研究所 発生・再生科学総合研究センター
     ゲノム・リプログラミング研究チーム チームリーダー)
開催:平成20年9月5日(金)

患者自身の細胞から免疫拒絶反応が起こらない患者自身のES細胞を樹立する、というアイディアは、最初の体細胞クローン動物が報告された10年以上前から提唱され、2000年にはマウスでそれが現実に可能なことが証明された。その後多くの研究成果が発表され、クローン胚由来ES細胞は受精卵由来ES細胞と区別できないほど同等であることも分かってきた。しかし、近年iPS細胞の樹立が可能になり、卵子の提供や生命の萌芽の破壊、といった倫理問題が生じてしまうクローン技術はもはや時代遅れだと思われ始めてしまった。しかしもともとクローン技術は個体の再生や遺伝子改変動物の作出手段としての利用や、核の初期化機構の解明やインプリント遺伝子の解析手段など基礎生物学における新たな解析手段として開発されたものであり、医療への応用は後からつけ足されたものである。そこで本セミナーでは、クローン技術がもつ底力、クローン技術なら可能だがiPS技術では不可能、といった研究についていくつか紹介する。

【講師略歴】
1990年 茨城大学農学部畜産学科育種繁殖学 卒業
1992年 茨城大学大学院農学研究科畜産学専攻 修了
1996年 東京大学大学院農学系研究科獣医学専攻 修了 博士 取得
1996年 ハワイ大学医学部 留学
1998年 ハワイ大学医学部 助教授
1999年 ロックフェラー大学 助教授
2001年 理化学研究所 発生再生科学研究センター チームリーダー
2001年 (米)アドバンスドセルテクノロジー主任研究員 兼任
2002年 理化学研究所 発生再生科学研究センター チームリーダー 専任
滋賀医科大学・関西学院大学 客員教授
京都大学 客員助教授



第2回講演会
第2回「多能性を規定する転写因子ネットワークの構造」
講師:丹羽 仁史
   独立行政法人 理化学研究所
   発生・再生科学総合研究センター 多能性幹細胞研究チーム 博士

開催:平成20年5月20日(火)

分化多能性(pluripotency)は、最も厳密には、個体を構成する全ての種類の分化細胞に分化出来る能力を指す。このような能力を持つ細胞としては、胚盤胞の内部細胞塊やそれに由来する胚性幹細胞(ES細胞)があるが、今日では転写因子の強制発現により、分化細胞からも誘導することが可能となっている。この発見は、多能性が細胞の分化形質の一つとして、転写因子ネットワークにより規定されていることを如実に物語っているが、ではこの多能性を規定する転写因子ネットワークの構造はどのようなものなのだろうか?多能性維持に必須な転写因子であるOct3/4やSox2は、Nanogとともにポジティブ・フィードバック制御を構成し、自らの発現を維持していることが示唆されているが、多能性幹細胞がシグナルに応答して分化を実行するためには、この安定状態を破綻させる機構も必要となる。Klf4は、多能性を誘導する上で必須であるが、そのES細胞における機能は、解析が進んでいない。我々は、最近、Klf4が(1)Oct3/4,Sox2と協調して標的遺伝子転写活性化に寄与すること、(2)強制発現によりマウスES細胞のLIF非依存的自己複製を維持できること、(3)LIF-STAT3の直接の標的遺伝子であること、を見出した。一方で、胚性癌細胞P19では、Klf4は発現していないにもかかわらず、Oct3/4とSox2の発現は維持されている。これらの知見を総合的に解釈すると、多能性を維持する転写因子ネットワークは、シグナルを統合して伝達するネットワーク(Klf4, Nanog etc)とこれらを受けて多能性を直接規定するネットワーク(Oct3/4, Sox2 etc)に分類出来ると考えられる。本講演では、この「転写因子ネットワーク階層モデル」について概説し、皆様のご批評を乞いたい。

参考文献
Niwa, H., How is pluripotency determined and maintained? Development, 134, 635, 2007.
Niwa, H., Open conformation chromatin and pluripotency. Genes Dev, 21, 2671, 2007.




第1回講演会
第1回「再生を科学する−プラナリアの再生からiPS細胞まで」
講師:阿形 清和  京都大学大学院理学研究科・生物科学専攻 生物物理学教室 教授

開催:平成20年2月8日(金)

ヒトのES細胞が作られてから今年で10年を迎える。ヒトのES細胞が作られてから再生医療という言葉がマスコミで盛んに使われるようになり、韓国の黄教授のねつ造問題によってマスコミのスキャンダルの標的に変わっていった。そして、スーパースター山中伸弥氏の登場によって、再生医療は日本のサイエンス界の夢を託すことになる。
 ここでは、そんな華々しい再生医療を取り巻く環境から一歩離れて、再生研究の原点に帰って、今日の再生医療の流れをサイエンスの視点から見直す作業を試みる。まずは、プラナリア・イモリといった高い再生能力をもつ生物から、われわれはどのような再生の戦略を学び、またクローン動物の作出は何を問題提起したのかを考え直し、ES細胞とiPS細胞を『再生生物学』者はどのように位置付けているのかを紹介したい。


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