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進化する再生医学 (第7回)

 膵β細胞の再生による糖尿病治療
 -膵外分泌細胞から内分泌細胞へのリプログラミングは可能か-
   大阪大学大学院医学系研究科
 分子治療学講座(幹細胞制御学分野) 教授
 宮崎 純一

  糖尿病は、血糖値を下げるインスリンの相対的あるいは絶対的不足により起こる。膵臓移植や膵島移植は抜本的な治療法であるが、ドナー不足が問題である。そのため、膵β細胞をin vivoで再生させようとする試みに大きな期待がもたれている。最近の報告で、β細胞そのものが、ある程度増殖能を有していることが示されたが、β細胞をin vivoあるいはin vitroで増殖させることは、今のところ困難である。一方、in vivoで、β細胞の再生が起こることが知られている。例えば、膵管を結紮することにより、外分泌線細胞が膵管細胞に“分化転換”(acino-ductal transdifferentiation)を起こし、その一部がインスリン産生細胞に変化する。このようなときにPdx-1陽性細胞が出現し、それらの細胞がβ細胞へ分化することがあるとされている。このPdx-1は膵臓の発生分化に必須の転写因子として知られている。膵外分泌細胞にアデノウイルスベクターを用いてPdx-1, Ngn3, MafAという3つの転写因子を導入すると、外分泌細胞がインスリン産生細胞にリプログラムされたという報告がある。また、膵管結紮を行った成体マウス膵から膵島のすべての細胞になることのできるNgn3陽性の膵前駆細胞が同定されたとの報告も出ており、in vivoの膵β細胞の再生が注目されている。
 われわれは、Tet-Offの系でPdx-1を発現制御可能なマウスとElastase-creトランスジェニックマウスを交配させ、その仔マウスの膵組織の観察を行った。テトラサイクリンを飲用水に加えPdx-1の発現を抑制して交配を行った場合、膵組織は正常であったが、成体マウスにおいてPdx-1を過剰発現させた場合、免疫組織学的変化の検討により、膵外分泌細胞が次第に膵管細胞に“分化転換”し、さらに増殖後、その一部が内分泌前駆細胞を介して膵島内β細胞に再分化することが示された。この研究から“分化転換”あるいは“リプログラミング”の分子機構の解明が進むものと期待される。
 このように、組織幹細胞、あるいは分化転換を用いた再生研究も進展している。患者自身の細胞からβ細胞を再生することになるので、成功すれば、免疫拒絶などの心配も不要で、究極的な治療になるものと期待される。本講演では、以上のようなβ細胞を再生する研究の現状と展望を、我々のデータとともに紹介する。
 
【講師略歴】
  昭和53年 京都大学大学院理学研究科修了(理学博士)
  昭和58年 大阪大学医学部卒業
  昭和58年 大阪大学医学部附属病院第4内科医員(研修医)
  昭和59年 米国 国立衛生研究所(NIH)に留学、Visiting Associate
  昭和62年 熊本大学医学部附属遺伝医学研究施設・助教授
  平成3年 東京大学医学部 疾患遺伝子制御(サンド)講座 教授
  平成6年 東北大学加齢医学研究所 遺伝子導入研究分野 教授
  平成8年 大阪大学医学部栄養学講座 教授
  平成13年 (配置替え)
  大阪大学大学院医学系研究科
分子治療学講座(幹細胞制御学分野) 教授
 


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